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2017/6/21
平成29年度 第1回IMICセミナー
臨床試験から見た製薬メーカーの倫理観: 非劣性試験を通して見えてくるもの
2017年6月21日、IMIC賛助会員様限定の第1回IMICセミナーが開催されました。
今年度第1回目となる今回は、毎年ご講演いただいている名郷直樹先生(武蔵国分寺公園クリニック)より「臨床試験から見た製薬メーカーの倫理観: 非劣性試験を通して見えてくるもの」と題してお話しいただきました。症例をもとにEBMの5つのステップについて解説していただき、実際に論文を読んで得られた情報のディスカッションなども交えた貴重な講座となりました。
■ 1.患者の問題の定式化
まず、外来通院中の喘息の症例(45歳女性)を取り上げ、ステロイド単剤とβ刺激薬との合剤のどちらを用いるとよいかという問題を提示していただきました。
症例に対して、PECO(Patient、Exposure、Comparison、Outcome)を用いて問題をどのように定式化できるか、真のアウトカムと代用のアウトカムの違いなどについて、参加された方々の意見をふまえて解説していただきました。
■ 2.問題についての情報収集
試験結果をいくつか紹介していただきながら、文献情報の収集に役立つ方法をお話しいただきました。
特にPubMedのClinical Queriesという検索機能は、検索語を入力すると適切な検索式が自動的に構築されることから、最適な論文を見つける上で有用とのことでした。
さらに、CMECジャーナルクラブのウェブサイトでは、エビデンスのビデオ配信(無料)や、質の高い英語論文の日本語要約の配信(有料)を行っているそうです。
■ 3.情報の批判的吟味
非劣性試験の研究方法が妥当であったかという観点から、高価な合剤が安価な単剤に対して劣っていないことを検討する意味があるのか、重症喘息関連イベントが2倍未満(相対危険の95%信頼区間の上限が2.0未満) の場合を非劣性としてよいのか、といった疑問を提起されました。
さらに、結果を批判的に評価する指標として相対危険や治療必要数の考え方とその計算方法、95%信頼区間の読み方、危険率(p値)の考え方などについて、具体例を交えてわかりやすく説明していただきました。
■ 4.患者への適用
論文の結果が目の前の患者に役立つかという視点で、サブグループ分析の問題、合剤と単剤の重症喘息関連イベントリスクの大きさ(非劣性のマージンの決め方)、薬価の違いなどの問題に触れられました。
その後、論文の結果を患者に説明する場合、どのように説明したらよいか、参加者どうしでも話し合いながら検討しました。
■ 5.1-4のステップの評価
自分自身が提供した医療を批判的に吟味するという観点から、様々な非劣性試験の結果を取り上げ、特にスタディデザインが適正かどうかを中心にお話しいただきました。
さらに問題提起として、高価な薬剤の使用促進を目的として統計学的に非劣性という結果を利用することの非倫理性や、インパクトファクターの高い権威ある学術誌にも質が低いと思われる論文がしばしば掲載される現状を指摘されました。
■おわりに
ユーモアを交えた3時間の楽しい講座を通して、臨床試験のサイエンスと倫理は担保されるべき、と先生は語られました。参加された方々からも多くの質問や意見が寄せられ、臨床試験の質、それを支えるスタディデザインなどに対する関心の高さがうかがえました。
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