一般財団法人 国際医学情報センター 信頼できる医学・薬学・医療情報を適切に提供することによって健康社会に貢献します。

一般財団法人 国際医学情報センター

IMICライブラリ IMIC Library

ホームIMICライブラリMMWR抄訳2023年(Vol.72)野生株ポリオウイルス1型アウトブレイクの最新情報 ・・・

MMWR抄訳

rss

2023/04/14Vol. 72 / No. 15

MMWR72(15):391-397
Update on Wild Poliovirus Type 1 Outbreak — Southeastern Africa, 2021–2022

野生株ポリオウイルス1型アウトブレイクの最新情報 ― アフリカ南東部、2021年~2022年

野生株ポリオウイルス(WPV)血清型の2型および3型は世界的に根絶が宣言されており、WPV1型(WPV1)はアフガニスタンとパキスタンのみで流行が継続している。アフリカ南東部では1990年代以降、WPV1は検出されておらず、2020年8月25日、WHOアフリカ地域には固有のWPVはないことが証明されていたが、2022年2月16日、マラウイ在住の小児1例にWPV1感染が確認され、その後、モザンビークでも症例が確認された。今回、アウトブレイク対応の最初の報告からの進捗状況について記述する。2021年11月~2022年12月、アフリカ南東部における小児および思春期齢のWPV1に起因する麻痺性ポリオは計9例が確認され(マラウイ1例、モザンビーク8例)、麻痺の発症は2021年11月19日~2022年8月10日であった。モザンビークの8例は北西部のテテ州にて確認され、うち数例はマラウイ、ザンビア、ジンバブエとの国境付近に住む小児および青年であった。麻痺発症時の症例年齢は5カ月齢~14歳(中央値59カ月齢)、5歳以上は5例であり、経口ポリオワクチン3回以上接種は2例のみであった。麻痺の発症からゲノム配列解析結果報告までの期間中央値は53日(36~96日)であり、ゲノム配列解析では、今回のアウトブレイクで分離されたすべてのポリオウイルスが2019年10月にパキスタンのシンド州にて検出されたWPV1系統に最も近い近縁種であることが示された。今回の対応に関与した5カ国の2021年における二価経口ポリオワクチン(bOPV)3回接種率はマラウイが89%、モザンビークが67%、タンザニアが70%、ザンビアが87%、ジンバブエが86%であり、2022年にはすべての国でポリオワクチン定期接種が強化された。急性弛緩性麻痺(AFP)サーベイランスでは、15歳未満の思春期齢10万人あたり2例以上の非ポリオAFP率を基準とし、5カ国の554地区のうち370地区(67%)にて基準に達し、2022年には512地区(92%)に増加した。また、タンザニアとジンバブエでは国レベルにて症例からの適切な便検体回収率80%以上を達成していたが(2021年は各98.5%、91.5%、2022年は各98.2%、91.3%)、地区レベルでは格差が認められ、2022年、タンザニアでは96%、ジンバブエでは87%の地区が80%以上の基準に達しており、マラウイ、モザンビーク、ザンビアではそれぞれ43%、52%、34%の地区が達成していた。環境サーベイランス(下水のポリオウイルス検査)では、採取した検体における非ポリオエンテロウイルス検出率50%以上をサーベイランスが機能していると信頼できる値とし、この目標値はマラウイにて6/12カ所、モザンビークにて3/14カ所、タンザニアにて10/11カ所、ザンビアにて11/11カ所にて達成され、2023年4月7日時点でWPV1陽性と判定された検体はない。マラウイにてWPV1が通知された33日後より、bOPVによる追加予防接種活動(SIA)が5歳未満の小児を対象に開始され、2022年にマラウイでは4回、タンザニア、ザンビアでは3回、モザンビークとジンバブエでは2回の全国レベルでのSIA、さらにモザンビークにて4回、タンザニア、ザンビアでは1回の地域レベルでのSIAが実施された。SIAの質の評価では、マラウイとモザンビークにてWPV1患者が発見された6地区のうち3地区にてロット品質保証サンプリング不適格と判定された。ポリオウイルスサーベイランスの感度をさらに向上し、SIAの質を改善し、定期ワクチン接種の強化することが初発例から12カ月以内のWPV1感染を阻止し、WHOアフリカ地区からWPVをなくすために重要である。

References

  • Bigouette JP, Wilkinson AL, Tallis G, Burns CC, Wassilak SGF, Vertefeuille JF. Progress toward polio eradication—worldwide, January 2019–June 2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2021;70:1129–35. PMID:34437527 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm7034a1>
  • Mbaeyi C, Baig S, Khan Z, et al. Progress toward poliomyelitis eradication—Pakistan, January 2020–July 2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2021;70:1359–64. PMID:34591827 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm7039a1>
  • Mohamed A, Akbar IE, Chaudhury S, et al. Progress toward poliomyelitis eradication—Afghanistan, January 2021–September 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71:1541–6. PMID:36480464 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm7149a1>
  • Fomban Leke RG, King A, Pallansch MA, et al.; Africa Regional Commission for the Certification of Poliomyelitis Eradication. Certifying the interruption of wild poliovirus transmission in the WHO African region on the turbulent journey to a polio-free world. Lancet Glob Health 2020;8:e1345–51. PMID:32916086 <https://doi.org/10.1016/S2214-109X(20)30382-X>
  • Malawi Ministry of Health; Global Polio Eradication Initiative. Davlantes E. Notes from the field: initial outbreak response activity following wild poliovirus type 1 detection—Malawi, February 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71:776–7. PMID:35679180 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm7123a3>
  • Wilkinson AL, Diop OM, Jorba J, Gardner T, Snider CJ, Ahmed J. Surveillance to track progress toward polio eradication—worldwide, 2020–2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71:538–44. PMID:35421079 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm7115a2>
  • Bigouette JP, Henderson E, Traoré MA, et al. Update on vaccine-derived poliovirus outbreaks—worldwide, January 2021–December 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2023;72:366–71. PMID:37022974 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm7214a3>

ページトップへ

一般財団法人 国際医学情報センター

〒160-0016 
東京都新宿区信濃町35番地 信濃町煉瓦館
TEL:03-5361-7080 (総務課)

WEBからのお問い合わせ

財団や各種サービスについてのお問い合わせ、お見積もりのご依頼、
サービスへのお申し込みはこちらをご覧ください。

お問い合わせ