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MMWR抄訳

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2023/03/17Vol. 72 / No. 11

MMWR72(11):273-277
Trends in Reported Babesiosis Cases — United States, 2011–2019

バベシア症報告例の動向 ― アメリカ、2011年~2019年

バベシア症は赤血球内バベシア属の寄生虫によって引き起こされるダニ媒介性疾患である。アメリカにおけるバベシア症のほとんどの症例は北東部および中西部の州においてクロアシダニ(Ixodes scapularis)に咬まれて感染するBabesia microtiが原因である。バベシア症は無症状の場合もあれば、軽症から重症な病状を引き起こす場合もあり、免疫不全や無脾症の人では致命的となることもある。多くみられる症状は発熱、筋肉痛、関節痛、頭痛などであり、特定の患者では血小板減少症、腎不全、急性呼吸窮迫症候群など重篤な合併症を発症することがある。バベシア症はアジスロマイシン、アトバコンなどの抗菌剤を併用して治療可能である。バベシア症はアメリカでは1969年にマサチューセッツ州ナンタケット島にてヒトでの初発例が確認され、2011年に届出疾患となった。今回、2010年~2019年にデータが提出され、2年以上連続して10例以上報告されている10州(コネチカット州、メイン州、マサチューセッツ州、ミネソタ州、ニューハンプシャー州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ロードアイランド州、バーモント州、ウィスコンシン州)におけるバベシア症の動向を評価した。2011年~2019年、37州より計16,456例のバベシア症の症例がCDCに報告され、今回の分析対象である10州からの報告は16,174例であった(98.2%)。報告症例数はニューヨーク州が最も多く(計4,738例、平均526.4例/年)、次いでマサチューセッツ州(計4,136例、平均459.6例/年)、コネチカット州(計2,200例、平均244.4例/年)が多く、バーモント州(計114例、平均12.7例/年)、ニューハンプシャー州(計340例、平均37.8例/年)では少なかった。人口10万人あたりの罹患率は0.32(2011年のバーモント州)~18.0(2015年のロードアイランド州)であり、ロードアイランド州、メイン州(人口10万人あたりの罹患率10.3、2019年)、マサチューセッツ州(同9.1、2019年)にて高かった。罹患率の変化率はバーモント州が最も大きく、2011年の0.3(2例)から2019年に5.4(34例)へ1,601.8%増加し、次いでメイン州[2011年の0.7(9例)から2019年に10.3(138例)へ1,421.6%増加]、ニューハンプシャー州[2011年の1.0(13例)から2019年に4.6(63例)へ371.5%増加]にて大きく、コネチカット州(338.4%)、マサチューセッツ州(193.0%)、ロードアイランド州(115.7%)、ニューヨーク州(58.3%)、ニュージャージー州(40.9%)でも有意な増加を認め、ウィスコンシン州(-28.9%)およびミネソタ州(-28.2%)では有意な変化は認めなかった。以上、バベシア症は北東部の複数州にて罹患率が増加しており、ダニ予防のメッセージ、医療サービス提供者への教育、これらの州への旅行者に対する感染リスクの認識を強化すべきである。

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