ナイジェリアから帰国した旅行者におけるサル痘 ― テキサス州ダラス、2021年7月

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MMWR抄訳

2022/04/08Vol. 71 / No. 14

MMWR71(14):509－516
Monkeypox in a Traveler Returning from Nigeria — Dallas, Texas, July 2021

ナイジェリアから帰国した旅行者におけるサル痘 ― テキサス州ダラス、2021年7月

サル痘は生命を脅かすこともある人獣共通感染症であり、西アフリカおよび中央アフリカにて発生する。ナイジェリアでは39年間ヒトでの感染は確認されていなかったが、2017～2018年にかけて発生したアウトブレイクでは118例が確認され、散発的な症例が持続して発生している。2018年9月～2021年5月、ナイジェリアへの海外旅行者にて6例がサル痘と診断され、イギリスにて4例、イスラエルとシンガポールで各1例であった。アメリカでは1人の中年男性が2週間持続する発熱、咳、疲労の後、びまん性発疹を発症し、2021年7月13日にダラスの救急科を受診した。男性は発症の1週間前以内にナイジェリアに渡航し、大規模なパーティーに出席していた。顔面に広範囲の膿疱性発疹を認めたため、空気感染隔離室に入室とされた。医師はCDCの健康に関する渡航先情報のWebページからナイジェリアに関する情報を見て、サル痘を疑い、公衆衛生当局にすぐに通知した。翌日、Dallas County Health and Human Services Laboratory Response Network LaboratoryでのリアルタイムPCR検査にて、病変部のスワブ検体から天然痘ではないオルソポックスウイルスのDNAが確認された。その後、CDCでのリアルタイムPCR検査にて西アフリカ系サル痘ウイルスと確認された。男性患者は6月25日にナイジェリアに到着、旅行中に3都市に滞在し、6月30日までに下痢、嘔吐、咳、発熱、倦怠感などを発症し、7月8日(帰国フライト前日)、体表部に膿性の発疹が出現していた。アトランタ経由にてダラスに到着し、帰宅した翌日、発疹が悪化し、顔面に出現し、7月13日に友人の運転で病院へ行った。1980年に天然痘が根絶して以降、この男性患者の年代での多くの人には天然痘ワクチンの定期的接種が行われていなかった。CDC、州および地域の公衆衛生当局、治療を担当した医師は7月13日～9月4日に集中的調査を開始し、計233名の接触者が確認されたが(高リスク0名、中リスク34名、低リスク/不明確189名)、アメリカ内での二次感染例は確認されなかった。中リスク接触者34名に対し、天然痘曝露後に接種が推奨されるオルソポックスウイルスワクチン(ACAM2000)の接種が地域の公衆衛生当局から推奨されたが、実際に接種した人はなかった。男性患者は重症であったため、tecovirimatによる治療も含め、32日間入院した。全ゲノム配列決定によりサル痘ウイルス株はナイジェリアで流行している株の類縁であることが確認されたが、ナイジェリアでの感染源は特定されなかった。

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