ホームIMICライブラリMMWR抄訳2021年(Vol.70)地域の麻疹根絶への進展 ― 全世界、2000年~2・・・
2021/11/12Vol. 70 / No. 45
MMWR70(45):1563-1569
Progress Toward Regional Measles Elimination — Worldwide, 2000–2020
2012年、世界保健総会(WHA)は2020年までにWHOの6地域のうち5地域における麻疹根絶することを目標としたGlobal Vaccine Action Planを是認した。今回、WHAの2000年~2020年の麻疹根絶目標に向けた進捗状況について述べ、前回の報告を更新する。WHOとUNICEFは接種記録のデータから麻疹含有ワクチン(MCV)の1回目(MCV1)接種率および2回目(MCV2)接種率を推算した。全世界のMCV1推定接種率は、2000年から2010年にかけて72%から84%に増加したが、2010年以降は84%~85%で停滞し、2019年にピーク値の86%となり、COVID-19パンデミック中の2020年には84%に減少した。WHOに加盟する194カ国のうち、MCV1接種率が90%超を達成した国は2020年では75カ国(39%)であり、2019年の119カ国(61%)から37%減少した。2020年の定期予防接種を介したMCV1を接種していない乳児は2,230万人で、2019年から300万人(16%)増加した。MCV1未接種児が多い10カ国はナイジェリア(330万人)、インド(260万人)、コンゴ民主共和国(150万人)、エチオピア(140万人)、インドネシア(110万人)、パキスタン(100万人)、アンゴラ(70万人)、フィリピン(60万人)、ブラジル(60万人)、アフガニスタン(40万人)であり、この10カ国で世界全体の2/3近く(59%)を占めていた。全世界の推定MCV2接種率は2000年の18%から2019年には71%と4倍近く増加したが、2020年には70%に減少した。MCV2を実施している国は2000年の95カ国(50%)から2020年にはマダガスカルとナイジェリアにおいても導入され、179カ国(92%)となり、88%増加した。2020年、麻疹サーベイランスは全194カ国にて実施され、193カ国(99%)がWHO Global Measles and Rubella Laboratory Network (GMRLN)を介して標準化された品質管理研究室にて検査をしたが、検体数は2010年以降で最少の122,517件であった。また、目標検査感度指標(人口10万人あたり2例以上)を達成したのは2019年が除外症例を報告した157カ国のうち81カ国(52%)であったのに対し、2020年では144カ国のうち46カ国(32%)のみであった。麻疹小児例の報告数は2000年(853,479例)から2016年(132,490例)にかけて84%減少し、100万人あたりの年間麻疹罹患率は2000年(145例)から2016年(18例)にかけて88%減少したが、2019年(120例)には567%増加し、2020年(22例)と82%低下した。破壊的なアウトブレイク(20例/100万人以上)は2020年、WHOの5地域にて26件報告され、アフリカ地域(AFR)にて17件(65%)が発生していた。2020年に麻疹症例を報告した102カ国のうち麻疹罹患者から分離されたウイルスの遺伝子型は47カ国(46%)にて報告され[2019年は141カ国中88カ国(62%)、遺伝子型の内訳は1,268件中、D8が947件(75%)、B3が307件(24%)、D4が14件(1%)であった。推定麻疹症例数は2000年の36,763,000例から2020年には7,549,000例と79%減少し、麻疹による推定年間死亡者数は21,072,800例から60,700例に94%減少し、麻疹ワクチン接種により世界全体で推定3,170万人の死亡が回避されたと推定された。2020年末までに81カ国(42%)が麻疹の根絶を維持していると検証されたが、新たに根絶を達成した国はなく、2016年以降に麻疹根絶を達成していた9カ国(アルバニア、カンボジア、チェコ、ドイツ、リトアニア、モンゴル、スロバキア、イギリス、ウズベキスタン)にて再び感染流行が確認された。地域の麻疹根絶の目標を達成するためには、すべての小児がMCV2を利用でき、堅固なサーベイランス実施、免疫ギャップを特定および解消するための取り組みが必要である。
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