ホームIMICライブラリMMWR抄訳2006年(Vol.55)マラリア-グレート・エクスーマ島、バハマ諸島、20・・・
2006/09/22Vol. 55 / No. 37
MMWR55(37): 1013-1016
Malaria - Great Exuma, Bahamas, May-June 2006
ヒトマラリアは、Plasmodium属の4種類の特異な原虫(熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫)に起因し、これらの寄生虫は感染した雌のハマダラカに刺されて感染する。カリブ地域では、マラリアはハイチとドミニカ共和国のあるヒスパニオラ島を除く全島から除去されており、それは総合的な対策手段、社会経済的発展、周到な公衆衛生調査の連携による結果であった。マラリアが既に風土病ではないカリブ諸島においても、熱帯気候、媒介動物の存在、マラリア流行国との近接等により、疾病が再流行する危険性は持続している。この感受性はバハマ諸島、グレート・エクスーマ島の最近のアウトブレイクにより裏付けられ、2006年5月~6月に合計19のマラリア症例が確認された。この報告では、北米とヨーロッパの旅行者における4症例について述べているが、マラリア輸入症例は訪問国におけるマラリア問題を示唆し、地域保健当局による調査の助けとなる。9月19日、新たな報告症例がなくなって3ヵ月後に、CDCは、米国を拠点とする旅行者がグレート・エクスーマ島旅行前後、旅行中に抗マラリア薬クロロキンを予防服用する今までの推奨を取り消した。症例1では、米国の33歳男性が5月4日~7日、島へ訪問中に間歇熱、発汗、腹部不快感、嘔気、嘔吐を発現した。患者はマラリア既往歴はなかったが、5月24日、血液塗抹標本により熱帯熱マラリア原虫が発見された。クロロキン服用後、キニーネ、ドキシサイクリンに変更し、通院治療後無事に回復した。症例2では、ドイツの29歳女性が島を5月18日から31日まで訪問し、5月30日から発熱、頭痛、嘔気、嘔吐を発現した。ドイツ帰国後、6月6日に高熱と首の凝りで入院し、血液塗抹標本は熱帯熱マラリア原虫を曝露した。患者はアーテメター・ルメファントリン合剤治療で回復した。症例3では、カナダの20歳男性はバハマ生まれで4月19日~6月11日に島で過ごし、6月14日に発熱、悪寒で救急診療部に搬送され、6月16日に血液塗抹標本で熱帯熱マラリア原虫によるマラリア診断が確認された。外来患者としてクロロキンと後にアトバクォン・プログアニル合剤の投与で無事に回復した。症例4では、米国の船上生活者である66歳男性が4月末~5月末に島に滞在し、5月初旬に発熱、悪寒、発汗、頭痛、疲労を発現した。患者は他のバハマ諸島を航海し、6月18日の島帰着日に発症し、地方診療所で熱帯熱マラリア原虫によるマラリアと診断された。クロロキンとプリマキンで治療し、無事回復した。バージニア州での最初の症例報告後、バハマ保健省(MOH)は、汎米保健機構の技術的援助で疫学的、昆虫学的調査を実施した。また、MOHはBahamian Department of Environmental Health Servicesと共に、グレート・エクスーマ島で既に実施されている防蚊対策を強化した。6月6日~30日に島では積極的に患者を発見する活動が実施されたが、6月19日の症例4以降マラリアは診断されなかった。
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