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セミナーレポート 2016

平成28年度 第3回IMICセミナー

2016/9/14

平成28年度 第3回IMICセミナー

医学統計学講座 ~臨床試験のための医学統計学入門Ⅱ~

 2016年9月14日、IMIC賛助会員様限定の第3回 IMICセミナーが開催されました。

 今回は「医学統計学講座~臨床試験のための医学統計学入門Ⅱ~」と題しまして、機関誌『あいみっく』「医学統計学シリーズ」の連載でお馴染みの森實敏夫先生(公益財団法人日本医療機能評価機構 客員研究主幹)にご講演いただきました。

 

 

医療統計学入門の講座は、前回皆様からご好評いただきました「平成27年度 第4回IMICセミナー」に引き続き、2回目の開催になります。今回は、統計解析ソフトウェア「R」とBUGSソフトウェア「OpenBUGS」を使った、より実践的な演習を交えての講座となりました。

 

■臨床試験における仮説とデータ

まず、イントロダクションとして統計学的仮説の考え方と、「帰無仮説有意差検定」と「ベイズ推定」という2つの統計学的アプローチの方法についてお話しいただきました。

 試験薬の有効性を検証するにあたってどんな仮説が考えられるか(等性、非劣性、優位性、同等性)、研究デザインによって差の検出の目的がどう変わってくるのかについて解説いただいた 後は、ランダム化比較試験を例にとって、操作変数によるランダ ム割り付けと介入群、交絡因子、アウトカムの関係性を学びました。また、このモデルが成立するのはランダム割り付けがあくまで理想的に行われた場合であり、実際には様々な要因により、サンプリングエラーやバイアスリスクが発生しうることを合わせて学びました。

  上記を踏まえて、「R」を使って正規分布からのランダムサンプ ルの平均値の分布をシュミレーションした後、「研究におけるリス ク比の計算」についての演習を行いました。

 

■生存分析

 ある一定期間の生存率を算出するためには、その期間中すべての患者を追跡し続けることが理想ですが、実際の臨床試験では、各症例のエントリー時期がまちまちであったり、途中で観察不能になってしまう脱落例が発生したりするため、この方法はあまり現実的ではありません。そこで、イベントが発生するまでの時間を解析する「Kaplan-Meier法」を使うことで一定のルールの中で生存率を推計することができ、「薬剤投与による 生存率の推定」「二群間の生存率の差(試験薬対標準薬、試験 薬対プラセボなど)」の把握が可能となります。

 

  講演では「Kaplan-Meier法」の概念を理解したうえで、実際 に生存を比較する手法として「ログランク検定」 、「Kaplan-Meier 法」で得られた生存関数からハザード率を推計する方法として「コックス比例ハザード解析」を学び、サンプルデータを用いて「R」で検証を行いました。

 

 

 

 

■回帰分析

 2つ以上の変量の関係を分析する手法として「回帰分析」があり、説明変数から目的変数を推定することができます。

 ランダム化比較試験と違い、観察研究ではたくさんの交絡因子が存在し得るため、複数の変数からなる多変量データを扱う統計的手法として「重回帰分析」を用います。「重回帰分析」には目的変数の種類によりさまざまな使い分けが必要で、たとえば目的変数が2値の場合には「多重ロジスティック回帰モデル」を、目的変数が生存時間などの連続値の場合には「多変量コックス比例ハザードモデル」を用います。また、「重回帰分析」では複数の説明変数を同時に扱うことができますが、変数の数が多すぎると正確な解析結果が得られないため、「Stepwise法」により変数選択を行います。

 演習では「R」を使って、原発性胆汁性胆管炎(PBC)を例に、各症例の年齢・浮腫の有無・プロトロンビン時間・アルカリフォスファターゼ値からなる4つの変数からアルブミン値の推計を行いました。

 

■Open BUGSによるベイズ推定

 最後に、「Open BUGS」による「ベイズ推定」の方法について学びました。

 ある事象x が起きたと分かったもとでの事象yが起こる確率を条件付き確率といいますが、「ベイズの定理」は条件付き確率の下で成り立つ定理です。講演ではベン図を使いながら、事象xが起きるときに事象yが起こる確率、事象yが起きるときに事象xが起こる確率が等しいことに注目して、「ベイズの定理」の基本的な考え方を理解しました。

 BUGSソフトウェアはMCMCの手法を用いたベイズ推定を行うためのソフトウェアの総称ですが、事前分布と実際に測定されたデータをもとに、事後分布の密度関数の計算を行うことができます。「Open BUGS」を使った演習では、20歳の日本人の血圧の例で、母集団の血圧の平均値と標準偏差の推定を行いました。

 

 医療統計学入門の講座は今年2回目の開催ということで、より実践に踏み込んだハイレベルなものとなりました。参加者一人一人にパソコンが用意され、実際に手を動かして作業をすることで、一層理解を深めていただけたことと思います。講演後の感想では、ベイズ統計学についてもっと詳細を知りたいというご意見もあり、統計学に関する関心の高さがうかがえました。

 

 次回の第4回 IMICセミナーではメディカルライティング講座を企画しております。賛助会員の皆様のご参加を心よりお待ちしております。

 

2016年9月吉日

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