ホームIMICライブラリMMWR抄訳2017年(Vol.66)公共の水施設における塩素吸入による傷害 ― カリフ・・・
2017/05/19Vol. 66 / No. 19
MMWR66(19):498-501
Inhalational Chlorine Injuries at Public Aquatic Venues — California, 2008–2015
2015年6月、カリフォルニア州のContra Costa Health ServicesのEnvironmental HealthとHazardous Materials (hazmat)は屋外の市営ウォーターパークのプールにおける化学物質の放出に関する警告を発表した。2015年6月18日午後2時29分、コントラコスト郡の屋外ウォーターパークにある5つのプールのうちの1つで10~12名が嘔吐や呼吸器症状を来したとの9-1-1コールがあり、消防署員が出動した。3時07分にはhazmatに化学物質漏出の調査依頼があり、4時14分にhazmatのスタッフ、4時30分にEnvironmental Healthのスタッフが到着した。プールで泳いでいた人、約50名に症状が発現、34名(68%)が嘔吐、咳、眼刺激などの症状を示し、17名(50%)がContra Costa’s Emergency Medical Services (EMS)にて治療を受け、17名(50%)は地方の救急施設に搬送された。9-1-1コールから2時間以上経過後に採取した空気検体に塩素は検出されず、プール水の塩素濃度は10.5~13.5ppm、pHは6.8であった(州の基準値は最大10ppm、pH7.2~7.8)。遊離塩素濃度も違反しており(基準値:4ppm未満)、他のプールのpHも低かったため(7.0未満)、Environmental Healthはこれらのプールを調査が終了するまで閉鎖した。通常、プールの水は再循環ポンプで排出され、再循環ラインで塩酸や次亜塩素酸ナトリウム溶液などの化学物質により病原菌を不活化し、pHが調整されるが、化学物質の制御装置の記録では、事故の前日、6月17日の午後10時40分から約16時間の間、再循環ポンプが停止していた(流量ゼロ)。また、この16時間の間、制御装置には断続的に化学物質が装置の故障により再循環ラインに流出していたとの記録もあり(次亜塩素酸ナトリウム:約81ガロン、計218分間、塩酸約2ガロンが計39分間)、濃縮した化学物質が混合し、有毒な塩素ガスが発生したと考えられる。過剰供給のアラームは朝8時40分頃、スタッフにより切られていた。午後2時20分頃、スタッフがメインの再循環ラインを稼働させ、その約10分後、従業員から9-1-1コールがあった。このような公共の水施設での化学物質曝露について調査した結果、2008~2015年にて8件の有毒な塩素の放出が確認された。これら9件の事故で計155名(中央値16名/件、2~34/件)が呼吸器症状、嘔吐、眼刺激などの症状を来し、121名(78%)が救急搬送された。また、これらの事故の原因は化学物質制御装置の故障、バルブ不全、人的エラー、さらにプールに入っていた客が再循環ポンプを稼働させた、などが挙げられた。
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