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MMWR抄訳

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2016/01/22Vol. 65 / No. 2

MMWR65(2):27-29
Inadequate Diagnosis and Treatment of Malaria Among Travelers Returning from Africa During the Ebola Epidemic — United States, 2014–2015

Ebolaが流行しているアフリカから帰国した旅行者のマラリアに対する不適切な診断と治療 ― アメリカ、2014~2015年

2012年、アメリカでは海外旅行から帰国した1,683名にてマラリアの発症を認めており、その半数以上が西アフリカ16カ国(ベニン、ブルキナファソ、ケープベルデ、コートジボワール、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、マリ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、トーゴ)のいずれかへの渡航であった。西アフリカでは2014年、とくにギニア、シエラレオネ、リベリアにてエボラウイルス病(Ebola)が流行し、約20,000例が報告された。Ebolaとマラリアは発熱、倦怠感など臨床症状が似ており、特に初期では臨床的に区別がしにくいため、鑑別には迅速な研究室での検査が必要である。CDCはマラリア流行地域への渡航歴がある発熱患者に対しては、数時間で結果が出る血液塗布検体顕微鏡検査を行い、Ebolaの診断にはRT-PCR法を推奨している。血液塗布検体の検査結果により適切な抗マラリア薬による治療を開始するが、2014年10月以降、エボラウイルス感染発生国からの旅行者に対しては空港にてEbolaのリスク因子を確認し、検査および患者のモニタリングが行われるようになり、マラリアの検査および診断が遅れるようになった。2015年3月にシエラレオネ、ギニア、セネガルを訪問後に帰国した34歳の男性は、発熱のためEbola低リスク例として管理下におかれたが、帰国から7日後、悪心、食欲不振、発熱(華氏105.8度)を来し、早朝、EMS(救急医療サービス)により搬送、渡航歴からEbolaが疑われたため、採血した検体は病院では検査されず、州の検査所にて検査された。午後3時にマラリア陽性が確認され、抗マラリア治療が開始された。翌日、別の病院へ移り、血液塗布検体検査によりPlasmodium falciparumによるマラリアと確診され、経口での治療により3日後に退院となった。また、同月にケニアから帰国した69歳の男性が発熱し、3日後に救急ケアクリニックを受診し、ケニアへの渡航歴を告げると検査を行わずに抗マラリア薬としてメフロキンの処方箋を渡された。しかし地域の薬局には在庫がなく、救急外来(ED)を受診したが、週末は顕微鏡検査が行えないため2日後に受診するよう言われ、無治療のまま症状が悪化、夜中に別の救急外来を受診し、マラリアの確定診断により経口抗マラリア薬合剤(アトバコン/プログアニル)が投与され、軽快した。さらに5月にはシエラレオネからの帰国した31歳の女性が発熱と腹痛のためEDを受診、Ebola のRT-PCR検査およびマラリア迅速診断検査は陰性であり、9時間後、他所での検査により尿路感染症であることが判明した。その後の転帰については不明である。

References

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