ホームIMICライブラリMMWR抄訳2015年(Vol.64)ドイツへ渡航してlive cell therapy・・・
2015/10/02Vol. 64 / No. 38
MMWR64(38):1071-1073
Q Fever Outbreak Among Travelers to Germany Who Received Live Cell Therapy — United States and Canada, 2014
2014年9~11月、New York State Department of Health(NYSDOH)はQ熱の原因病原体となるCoxiella burnetiiに対し血清反応が陽性であったニューヨーク州居住者5名の報告を受けた。全例がQ熱に一致する症状(発熱、疲労感、悪寒、頭痛など)を呈し、2014年5月に「live cell therapy」(時に「fresh cell therapy」)と呼ばれる治療を受けるためにドイツへの渡航歴があった。live cell therapyは、ヒト以外の動物(ヒツジなど)の臓器または胎児から精製した細胞をレシピエントに注入する手法で、さまざまな症状を治療すると宣伝されている。この治療はアメリカでは受けることができないため、注射を受けるためには海外へ渡航することになる。NYSDOHはCDCに通知するとともに、他の症例を集めるためにCDC’s Epidemic Information Exchangeに報告した。各症例の臨床および曝露情報は、ドイツのRobert Koch Instituteへ報告された。5例は10~15名のグループでドイツのRhineland-Palatinate州へ渡航し、5月30日にドイツの医師からヒツジ胎児細胞の筋肉注射を受けていた。また、5月28日に同じ医師から同様の注射を受けたカナダ居住者が7月にQ熱と診断され、国際保健規則により、カナダの公衆衛生当局から9月にドイツの当局へ通知された。その時点で、Rhineland-Palatinate州の連邦政府の保健省は、ヒトQ熱のアウトブレイクと細胞注射の生産に使用されたヒツジの吸入曝露の関連性を調査している。ドイツ人医師が1月~7月に治療した患者に対しQ熱曝露の可能性を通知したため、ニューヨークでの5例に対しQ熱検査が促され、3名はすでに診察を受けていたが、2名は症状があったが通知があるまで診察を受けていなかった。他のアメリカまたはカナダの居住者においてQ熱抗体価陽性およびドイツでのヒツジ胎児細胞の筋肉注射の治療歴は認めなかった。アメリカおよびカナダの公衆衛生当局では、渡航グループの他のメンバーの身元および国籍は把握しておらず、検査を受けたか、またその結果については不明である。6例の年齢中央値は62歳(59~83歳)、女性は4例で、羊に接触のあった1例を除き他の曝露の可能性は報告されなかった。3例では、それぞれ心房細動と腎臓結石、パーキンソン病と変形性関節症、多発性硬化症の既往歴があった。Q熱の兆候および症状は筋肉注射を受けた1週間以内に始まり、大半が約10~90日持続し、3例では9~10カ月間にわたり疲労感があり、他の症状としてそれぞれ悪寒、発汗、睡眠困難があった。C. burnetiiは病原性のI相型と無発病性のⅡ相型間で抗原性変異を起こし、急性感染では初めにⅡ相型抗体が出現し、Ⅰ相型よりも抗体価が上昇する。曝露後2~6カ月の抗体試験では、全例で急性疾患が示唆され、診断後にドキシサイクリンにより治療された。NYSDOHによる追跡調査に同意した2例の報告では、全体的な健康および活力の改善のためにヒツジ胎児細胞注射を選択し、5年間でドイツへ年2回渡航していたが、過去に注射後に疾患の兆候または症状はなく、注射前にQ熱感染のリスクに関する説明はなかった。医師は、live cell therapyの治療歴のある症例においてQ熱および人獣共通感染症のような健康リスクについて、認識しておくべきである。
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