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MMWR抄訳

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2009/11/06Vol. 58 / No. 43

MMWR58(43):1204-1207
Human Vaccinia Infection After Contact with a Raccoon Rabies Vaccine Bait - Pennsylvania, 2009

餌に仕掛けた狂犬病ワクチンを摂取したアライグマとの接触によるヒトワクシニア感染症-ペンシルバニア州、2009年

2003 年以降、アメリカ農務省野生生物サービスはメイン州からアラバマ州およびテキサス州の15州において、野生生物に対する経口狂犬病ワクチン(ORV)プログラムを行っている。このプログラムはアライグマやハイイロギツネ、コヨーテでの狂犬病の蔓延防止を目的とするものであり、経口動物ワクチン Raboral V-RG(メリアル社、アテネ、ジョージア州)を含ませた餌を使用する。このワクチンは部分的に弱毒化された組み換えワクシニアウイルス(コペンハーゲン株)と狂犬病ウイルス糖蛋白質遺伝子から成る。破裂した餌に触れるとワクシニア感染症を来すため、ヒトまたは家庭で飼われている動物が餌に触れた場合は、餌に印刷してある電話番号に連絡するシステムになっている。2009年8~9月にペンシルベニア州西部、オハイオ州、ウエストバージニア州の一部において ORVが撒かれ、2009年8月、ペンシルベニア州西部にて、35歳の女性が破裂した餌に触れたとPennsylvania Department of Health (PADOH)に連絡してきた。ブラックベリーを摘んでいた際、飼い犬が餌を拾い、歯で穴を開けた後に女性が餌を拾い上げ、V-RGワクチンがブラックベリーの刺でできた擦り傷のある右手から手首にかけて滴り落ちた。この女性は炎症性大腸疾患の既往があり、免疫抑制剤を服用していた。V-RGワクチン暴露の翌日(day1)、医師は狂犬病ウイルス中和抗体、オルソポックスウイルス(ワクチニア)免疫グロブリンIgGおよびIgM抗体分析のため血清検体を採取した。Day4、右手に赤い丘疹が数個出現、地元の病院の救急外来を受診し、丘疹から剥離物を採取しPADOHにて検査した結果、RT-PCR法にて非天然痘オルソポックスウイルスDNA陽性を認め、CDCによる検査ではワクシニアウイルスDNA、狂犬病ウイルスG蛋白質DNA、狂犬病ウイルスの中和抗体が確認された。オルソポックスウイルスIgGおよびIgM抗体は検出されなかった。day6、丘疹の数とサイズが大きくなり、患者は入院し、CDCが提供するVIGIV(Cangene社、ウィニペグ、カナダ)の単回投与(6,000 IU/kg)を行った。day9、ワクシニアウイルス病変は26個となり、day11には筋肉痛と頭痛を来たし、右手の発赤と浮腫は顕著となり、右腋窩リンパ節腫大も認められた。day12、VIGIV 6,000 IU/kgが抗ウイルス薬ST-246とともに投与され、day13には免疫抑制剤の段階的再導入を開始、day19に退院した。day28、病変の瘡蓋は剥がれ、基礎疾患の炎症性大腸疾患は安定、オルソポックスウイルスIgMは終始陰性であった。本例はORVプログラムと関連するヒトワクチニア感染症の2例目であり、1例目は2000年9月、飼い犬の口から破裂した餌を取り出そうとして噛まれた 28歳女性である。1990年以降、約1億個のRaboral V-RGが撒かれており、2008年は16州にて10,339,969個が撒かれ、ヒトまたは飼い犬が触れたとの報告は291件(2.8/100,000 個)であった。今後はこれらORVプログラムに関する情報を提供し、飼い犬をV-RGから遠ざけること、噛んだ場合は直接口から取り上げないこと、拾い上げる際は手袋やビニール袋を使うこと、触れた場合はヘルプラインへ直ちに連絡すること、目に入った場合は15分水で洗い眼科医を受診すること、感染した場合には家族などへの感染を避けることなどを周知徹底する必要がある。

References

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