ホームIMICライブラリMMWR抄訳2009年(Vol.58)ヒト狂犬病-ミズーリ州、2008年
2009/11/06Vol. 58 / No. 43
MMWR58(43):1207-1209
Human Rabies - Missouri, 2008
2008 年11月、Missouri State Public Health LaboratoryよりCDCに、ミズーリ州在住の55歳男性に狂犬病の疑いがあるとの報告があった。この男性は11月19日、左耳に痒みを覚え、次第に左顔面から腕まで広がっていった。21日、軽い胸痛が現れ、地元の救急外来(ED)を受診したが、検査に異常はなく帰宅した。翌22日には水を飲み込むことに関してパニック発作と不安症状を来たした。発症の4~6週間前に左耳をコウモリに咬まれていたことから狂犬病に対する曝露後予防(PEP)と破傷風 ―ジフテリアワクチンの追加接種が行われた。23日、胸痛の持続と左耳および左顔面の知覚麻痺のため別のEDを受診し、現状を説明、診察した医師は疾患の進行が進んでいる場合はPEPは有効ではないため、症状が悪化する場合には医療機関を受診するよう助言し、帰宅させた。その日遅く、脱水症状のためEDを再受診、24日に三次医療施設へ搬送、検体がCDCに送られ、26日に狂犬病と確診、ウイルスは銀髪コウモリの変異株であることが確認された。25日から Milwaukeeプロトコールに従った治療が行われたが、翌日には徐脈と低血圧、29日には欠尿性急性腎不全、30日には頭蓋内圧亢進ヘルニアを来たし、死亡した。Texas County Health Department(TCHD)はこの症例の確診後、家族、友人、接触した病院関係者に対し、問診による調査を開始、患者の唾液に接触した可能性のある家族、友人4名と病院関係者1名に対しPEPが開始された。また、飼っていたイヌは予防接種をしていたが、追加接種を行い、45日間家庭内隔離、ネコは予防接種をしていないためワクチンを接種し、動物病院にて6ヶ月間隔離とした。イヌ、ネコおよびヒトでの二次感染は認められていない。狂犬病には標準的な治療法は確立しておらず、発症した場合には致死率が高いため、動物に噛まれた症例や原因不明の脳炎を来す症例は狂犬病を疑い、迅速な診断と早期治療介入が重要である。
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