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MMWR抄訳

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2009/12/18Vol. 58 / No. 49

MMWR58(49):1377-1381
Imported Case of Marburg Hemorrhagic Fever - Colorado, 2008

マールブルグ出血熱の輸入症例-コロラド州、2008年

マールブルグ出血熱(MHF)はフィロウイルス科に属する1本鎖RNAウイルスであるマールブルグウイルス(MARV)による稀なウイルス性出血熱(VHF) 疾患であり、フルーツコウモリがMARVを持つことが示されている。アメリカにおけるVHF輸入例は1989年イリノイ州シカゴ、2004年ニュージャージー州トレントンにおけるラッサ熱(アレナウイルス性出血熱)の2例であり、フィロウイルス感染の輸入例は報告されていない。2008年1月1日、44歳の女性がウガンダへの旅行から帰国し、4日、頭痛、寒気、悪心、嘔吐および下痢を来たした。6および7日に外来を受診、血液検査にて白血球数の異常な減少 (900/μL)が認められ、8日、下痢および腹痛、疲労感の増悪、全身の脱力感、錯乱状態のためプライマリケア医を受診、検査にて肝炎および腎不全を認め入院となり、医師はこの症例をColorado Department of Public Health and Environment(CDPHE)に報告した。入院後、汎血球減少、凝固障害、筋肉炎、膵炎および脳障害を来したが、出血は月経による出血以外に認められず、レプトスピラ症、ウイルス性肝炎、マラリア、アルボウイルス感染症、急性住血吸虫症、リケッチアおよびVHF(エボラおよびマールブルグ出血熱) の検査は全て陰性であった。回復期早期(1月14日、発症より10日)に採取した血清検体をCDCにて検査したが、MARV陽性は認められず、19日に退院した。退院後も腹痛、疲労感、”mental fog”が持続、慢性肝炎および腎不全には至らず、また、貧血に対し輸血を受けた。2008年7月、ウガンダのPython Caveを訪れたオランダ人旅行者がMHFにより死亡したことを知った女性は、自分も発症の10日前(2007年12月25日)にPython Caveに行っていたため、再検査を依頼、ELISA法により抗MARV IgG陽性が認められた。CDPHEおよびCDCはこの症例の接触者(医療関係者:220、研究者:30、社会的接触者:10)について調査を行ったが、ハイリスク曝露および発熱性疾患例は認めなかった。また、Python Caveを訪れたツアーの参加者8名についても調査したが、MARV感染を示す結果は得られなかった。Python Caveはオランダ人症例への対応として2008年7月に閉鎖されたが、アフリカのMHFを風土病とする地域を旅行する際は感染のリスクに留意し、コウモリが生息する洞窟に入ることは避けるべきである。

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