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MMWR抄訳

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2013/10/25Vol. 62 / No. 42

MMWR62(42):834-837
Histoplasmosis in a State Where It Is Not Known to Be Endemic — Montana, 2012–2013

風土病の地域ではない州でのヒストプラスマ症 ― モンタナ州、2012~2013年

ヒストプラスマ症は汚染土壌の吸入後に二形性真菌のHistoplasma capsulatum感染が原因で発生し、最も一般的な臨床像は急性肺炎で、鳥およびコウモリの糞が豊富に含まれる土壌がみられるオハイオ川およびミシシッピ川渓谷の風土病である。2012年11月~2013年2月にモンタナ州で4例がヒストプラスマ症と診断された。症例間に疫学的関連は認められなかった。症例1は59歳女性で、既往歴は2002年に化学療法と放射線療法により治療された乳癌であった。2011年2月に左耳下腺腫脹のために受診し、CT検査および生検により病変が確認された。2012年10月時点で滲出性病変を形成していたが、発熱、寝汗、体重減少、咳、呼吸困難はなかった。11月11日に左耳下腺摘出術を施行し、組織学的にリンパ上皮嚢胞およびH. capsulatumと一致する酵母型を伴う壊死性肉芽腫炎症を認めたが、その後の尿中のEIA試験によるヒストプラスマ抗原は陰性であった。ヒストプラスマ症に対しイトラコナゾール治療を開始した。症例は2012年5月にカリフォルニア州サクラメントを訪問した際に、コウモリの糞を肥料として含有している土を使用した植物の鉢植えに参加していた。症例と同じツアーで、発症した症例は確認されていない。症例2は17歳男性で、2011年11月に疲労感が出現し、Epstein-Barウイルス(EBV)に対するヘテロフィル抗体の陽性であったため、単核球症と診断された。その後、9ヶ月にわたり、疲労感、頭痛、寝汗、体重減少が続き、2012年9月に臨床的に明らかな前頸部リンパ節腫脹を認め、CT検査により確認された。また、胸部レントゲン写真、完全血球算定、電解質、肝機能検査は正常範囲内であったが、EBV IgMおよびIgG値は上昇した、12月27日に前頸部および顎下リンパ節生検を施行し、H. capsulatumと一致する酵母型を伴う壊死性肉芽腫炎症を認め、2013年1月の尿中EIAは陰性であった。ヒストプラスマ症に対しイトラコナゾール治療を開始した。症例は洞窟の探検、湖および川の水上スポーツなどの野外活動を頻繁に行い、2012年の夏は庭師として働いた。症例3は、コントロール不良の2型糖尿病、喫煙歴、結腸癌で部分的結腸切除術を施行した既往歴がある79歳男性で、2012年7月8日に倦怠感および発熱のため救急科を受診した。7月18日のCT検査では左下肺葉肺炎および右肺の軽度の肺線維症があり、血液検査では軽度の白血球増加および赤血球沈降速度の亢進を認めたため、モキシフロキサシン(400mg/日)を10日間投与し、症状は改善した。10月10日のCT検査において、左下肺に陰影および右下肺に石灰化肉芽腫の所見を認め、11月の左下肺野の生検により、肉芽腫性の肺炎を認めた。2013年2月に生検組織の培養からH. capsulatumが検出された。症例4はコントロール不良の2型糖尿病の既往がある76歳女性で、2013年1月17日、鼻閉、乾性咳嗽、頭痛、胸部圧迫感、息切れが出現し、4日後に救急科を受診した。受診時では無熱性、両側性の呼気性喘鳴、低酸素を認め、迅速試験ではインフルエンザA陽性であったため、入院した。CT検査の結果、後腹膜/腸間膜のリンパ節腫脹および直腸壁の肥厚を伴う両即性の斑状浸潤を認めた。EIAによる尿中のヒストプラスマ抗原は陽性であった。ヒストプラスマ症に対しイトラコナゾール治療を開始した。各症例は、モンタナ州の南西部または東部に居住し、症例1以外では、モンタナ州外への最近の旅行はなく、症例3および4では、高リスクな曝露の可能性は認められなかった。風土病としてヒストプラスマ症が知られている地域での曝露の可能性がない場合、ヒストプラスマ症の診断および適切な治療が遅れる可能性がある。モンタナ州において、医療提供者はヒストプラスマ症に注意を払う必要があり、臨床的に矛盾がない症例では州外への旅行歴がなくても診断を考慮すべきである。

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