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MMWR抄訳

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2011/09/30Vol. 60 / No. 38

MMWR60(38):1301-1304
Clusters of Acute Respiratory Illness Associated with Human Enterovirus 68 - Asia, Europe, and United States, 2008-2010

ヒトエンテロウイルス68による急性呼吸器疾患の群発-アジア、ヨーロッパおよびアメリカ、2008~2010年

2008~2010年に発生したヒトエンテロウイルス68(HEV68)による呼吸器疾患の群発について報告する。HEV68はヒトライノウイルス(HRV)と疫学と生物学的特徴を共有する唯一のエンテロウイルスである。1962年にカリフォルニア州にて初めて気管支炎および肺炎小児例4例から検出され、その後ほとんど報告されていなかったが、2008~2010年にアジア、ヨーロッパおよびアメリカにてHEV68による呼吸器疾患のアウトブレイクが報告された。アジアではフィリピンにて2008年10月~2009年3月にかけてビサヤ諸島東部にて発生、肺炎で入院した816例の臨床検体のうち21検体(2.6%)がRT-PCR法にてHEV68陽性を示した。感染例のうち17例(81%)は0~4歳の小児であり、咳、呼吸困難、喘鳴、退縮などの症状を呈し、2例が死亡した。日本では2005年に初症例が報告され、2010年まで毎年数例(10例以下)報告されていたが、2010年に症例が急増し、全国から120例が報告された。臨床データの明らかなHEV68陽性小児例(11例)では、10例が急性呼吸器疾患、1例が熱性痙攣と診断された。年齢は10例が0~4歳であり、1例(4歳男児)が死亡している。ヨーロッパではオランダにて2010年8~11月、ライノウイルス陽性検体に突然変異検査として塩基配列の分析を行ったところ、急性呼吸器疾患24例の検体がHEV68陽性を示した。12例が20歳以上の成人であり、80%の症例に慢性疾患の合併を認めた。死亡例は認めていない。また、アメリカではジョージア州アトランタの病院が呼吸器ウイルスの新しい検査法を導入し、68検体を検査したところ、62検体(91.2%)にてHRV、6検体(8.8%)にてHEV68が検出された。この6例のうち3例が入院したが、ICU入院例はなく、死亡例も認めていない。ペンシルベニア州では2009年9月、小児66例の呼吸器検体をCDCに送付して検査した結果、28例(42%)にてHEV68が検出された。15例が0~4歳の小児であり、ICUへの入院を要した症例は15例であったが、死亡例は認めていない。さらにアリゾナ州では2010年8~9月、呼吸器疾患により入院する小児が例年に比べ多く認められたことから、7例の鼻咽頭検体をCDCに送付して検査したところ、5例にてHEV68が検出された。HEV68による感染症は軽症から重症まで幅広く、死に至る症例も認められることから、ウイルス性呼吸器疾患として認識すべき疾患である。

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