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MMWR抄訳

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2011/02/25Vol. 60 / No. 7

MMWR60(7):201-205
Fatal Laboratory-Acquired Infection with an Attenuated Yersinia pestisStrain - Chicago, Illinois, 2009

弱毒化Yersinia pestis株による致死性研究室内感染-イリノイ州シカゴ、2009年

2009年9月18日、Chicago Department of Public Health(CDPH)は、地域のある病院からペストの起炎菌であるYersinia pestisによる致死性研究室内感染症の疑い例の報告を受けた。患者は大学の研究室の研究者であり、研究グループの他のメンバーとともに色素沈着陰性(pgm-)弱毒化Y.pestis株(KIM D27)の研究を行っていた。pgm-弱毒化KIM D27株が研究室内感染やヒトの致死性を引き起こすことは知られておらず、National Select Agent Registryにも含まれていない。9月18日、大学、CDPH、Illinois Department of Public Health(IDPH)、CDCは死因の確定のため疫学・環境調査を開始した。この報告は、この患者の臨床経過や疫学・環境調査などの結果をまとめたものである。患者はインシュリン依存性糖尿病の60歳男性であり、2009年9月10日に3日間続く発熱と体の痛み、咳を主訴として外来を受診した。医師はインフルエンザなどを疑い救急診療部(ED)での診察を勧めたが、受診しなかった。9月13日、患者は発熱、咳、息切れの悪化のためシカゴのある病院のEDに救急搬送された。その後も呼吸困難が続き、血液検査所見では腎不全、初期のアシドーシス、肝酵素の上昇、著明な白血球増加を認めた。ED受診から約12時間後に呼吸困難が悪化し、心停止から1時間後に死亡した。9月15日に実施した剖検所見で肺ペストのエビデンスはみられず、病理検査や遺伝子検査などの所見より遺伝性ヘモクロマトーシスと診断された。その後剖検時の血液培養でY.pestisが分離され、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってpgm-Y.pestis株と確認された。研究室の環境調査で重大な欠陥はみられなかったが、研究所職員へのインタビューで患者は培養細菌の取り扱い中に手袋を使用していなかったことが明らかになった。以上の調査結果なども含め、患者の死因は仕事中の無意識でのY.pestis曝露(経路不明)による敗血症性ショックの誘発と判断した。予期せぬ致死的転帰の理由として、鉄獲得能の欠損のため弱毒化されていたKIM D27株がヘモクロマトーシスによる鉄過剰負荷により鉄獲得能の欠損を克服し、毒性が発現した可能性を考えた。吸入曝露の可能性を除外できないため、患者との接触歴のある研究室職員や家族などにドキシサイクリンの予防投与を行った。その後、さらなるY.petis感染者は発見されていない。アメリカで最後にY.pestitによる研究室内感染症の発生が報告されたのは1959年であり、本症例は弱毒化Y.pestis株の研究室内感染症による致死例の初めての報告である。一部の環境および宿主の状態下で弱毒化細菌による感染症は重篤な疾患を引き起こす可能性があるため、研究者は生菌培養を行う場合、それが弱毒化株であっても推奨されている保護具の使用を順守するべきである。

References

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