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デノスマブによる低カルシウム血症

2016年2月掲載

薬剤 デノスマブその他の代謝性医薬品
副作用 低カルシウム血症
概要 67歳、男性。胃癌で胃全摘術を施行後、両側水腎症と多発骨転移を認め胃癌再発と診断した。カルシウム・天然型ビタミンD3・マグネシウム配合剤を併用し、デノスマブの投与を開始した。2日後に手足のしびれと浮遊感を主訴に来院され、低Ca血症とQT延長を認め、緊急入院した。グルコン酸カルシウム注射で補正Ca7.7mg/dLまで回復したため、乳酸カルシウム水和物と活性型ビタミンD3製剤の経口に変更した。以後、デノスマブの再投与は行わず、低Ca血症は認めなかった。

監修者コメント

骨吸収抑制剤であるデノスマブ(ランマーク®)は破骨細胞の分化誘導因子であるRANKL (receptor activator of NF-κB ligand)を標的とした完全ヒト型モノクローナル抗体製剤である。多発性骨髄腫や固形癌骨転移に伴う骨病変の治療に用いられている。本症例では、胃癌の多発性骨転移に対して、デノスマブを投与したところ、著明な低Ca血症を認めた。デノスマブによる低Ca血症のリスク因子として、ゾレドロン酸の使用歴がないこと、腎機能低下などが報告されている。本症例では、胃全摘後の吸収障害も一因となっている可能性がある。胃癌術後の骨転移に対してデノスマブを使用する際は低Ca血症に注意する必要がある。

著者(発表者)
太治智愛ほか
所属施設名
兵庫県立尼崎病院外科・消化器外科
表題(演題)
デノスマブによる急激で著明な低カルシウム血症をきたした胃癌骨転移の一例
雑誌名(学会名)
日本臨床外科学会雑誌 76(増刊) 1026 (2015.10)
第77回 日本臨床外科学会総会 (2015.11.26-28)

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