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タクロリムスによる辺縁系脳炎様脳症

2015年12月掲載

薬剤 タクロリムスその他の代謝性医薬品
副作用 辺縁系脳炎様脳症
概要 76歳、女性。強皮症、関節リウマチに対して11年前からプレドニゾロン、5年前からタクロリムスを投与されていた。動悸、めまいと共に幻覚、異常行動、歩行障害が出現した。タクロリムスを自己判断で中止し、症状は病前の状態に戻ったが、タクロリムス再開により症状が再燃し、当科を受診した。入院時検査所見から亜急性に両側大脳白質病変および辺縁系脳炎類似の海馬病変を伴う脳症として傾眠、異常言動、幻覚、歩行障害、尿閉をきたすニューロパチーにて入院した。SIADHも合併しており、タクロリムスを中止し、補液管理を行ったところ、神経症状が約3週間で軽快した。

監修者コメント

免疫抑制剤であるタクロリムス(プログラフ®)は、臓器移植における拒絶反応の抑制や関節リウマチ、潰瘍性大腸炎などの治療に用いられている。本症例では、関節リウマチに対するタクロリムスの投与開始から5年後に、脳症、SIADHおよび末梢神経障害による尿閉が出現した。タクロリムスの神経合併症は多彩であり、薬剤開始後早期に出現することが多いが、本症例のように遅発性に数年後に出現する場合がある。タクロリムス内服中の患者で精神神経症状が出現した場合は、投与開始から数年以上経過していても本剤の副作用である可能性を念頭に置く必要がある。

著者(発表者)
中山侑泉ほか
所属施設名
東邦大学医療センター佐倉病院内科学神経内科
表題(演題)
Tacrolimus使用開始から5年後に辺縁系脳炎様脳症, SIADHおよび尿閉をきたした高齢女性
雑誌名(学会名)
神経治療学 32(3) 421-426 (2015.5)

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