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セフトリアキソンによる可逆性偽胆石症

2013年1月掲載

薬剤 セフトリアキソン抗生物質製剤
副作用 可逆性偽胆石症
概要 15歳、女性。頭蓋咽頭腫の開頭腫瘍部分摘出術施行、第9病日に拡大経鼻手術施行、術後に発症した髄膜炎にセフトリアキソン(CTRX)4g/日を15日間投与した。投与中止16日後の第46病日からシャント感染に対しCTRX4g/日を13日間追加投与、CTRX中止10日後の第70病日に右上腹部痛、発熱が出現した。第8病日の腹部単純CTでは胆嚢結石、胆管結石を認めていないが、第65病日の腹痛出現直前にCT検査で胆嚢内、総胆管内に石灰化結石を認め、肝胆道系の酵素が上昇し、総ビリルビン値は2.7mg/dLであった。CTRXによる可逆性偽胆石症の可能性が考えられたので経過観察としたところ、翌日に腹痛消失、血清ビリルビン値の低下を認め、CTRX中止後19日目の第79病日のCTでは胆嚢結石、総胆管結石は完全に消失していた。その後の経過は良好で第101病日に退院した。臨床経過から、CTRXによる可逆性偽胆石症が示唆される典型的な事例と考えられた。

監修者コメント

考察によれば、CTRXによる可逆性偽胆石症は小児に多く、CTRXと胆汁酸が同じ排泄経路を通るためCTRXが胆汁酸排泄を阻害し、胆汁中のカルシウムイオンが上昇することにより、CTRXがカルシウムと複合体を形成し胆石形成につながるとされている。本剤の添付文書の使用上の注意には、胆石・胆嚢内沈殿物の発生とともに、CTRXを成分とする腎・尿路結石があらわれるとして、注意が喚起されている。

著者(発表者)
花田徳大ほか
所属施設名
虎の門病院消化器内科ほか
表題(演題)
セフトリアキソンが原因と考えられた可逆性偽胆石症の1例
雑誌名(学会名)
日本内科学会雑誌 101(10) 2955-2957 (2012.10)

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