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プロピルチオウラシルによる肺胞出血

2013年1月掲載

薬剤 プロピルチオウラシルホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)
副作用 肺胞出血
概要 69歳、女性。34歳時の出産を契機に甲状腺機能亢進症を指摘され、Propylthiouracil(PTU)250mg/日の服用が開始された。以後、約35年に亘り近医で処方が継続されていた。49歳時には糖尿病の診断を受け、グリベンクラミドの服用を開始した。2010年1月~2月に咳嗽、血痰が出現、近医でびまん性陰影を認めたため精査目的で当科に入院、気管支鏡検査で出血源不明であったが出血時間は7分と著明に延長、BALで血性洗浄液を回収、びまん性肺胞出血と診断した。ANA80倍、PR3-ANCA陰性、MPO-ANCA 55EU、PTUの中止とプレドニゾロン(PSL)40mg/日の内服により、労作時呼吸困難、血痰、貧血が改善、PSLは1ヵ月かけて漸減、終了した。PTU中止3ヵ月経過後も甲状腺機能は正常のままであり、陰影消失、出血時間正常化し治癒に至った。後日実施したDLSTでPTUは陽性であった。薬剤投与開始後、極めて長期間経過してから発症しており、老年医学の観点からも注意が必要とされる事例である。

監修者コメント

薬剤誘発性のANCA関連血管炎の報告であり、35年という長期間投与後に発症した症例で、しかも原因薬剤の投与を中止しえたことから、長年に亘る服薬の必要性についても問題を提起している。本剤の使用上の注意「副作用」の項には、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎症候群について、血尿、蛋白尿等の初発症状による急性進行性腎炎症候群、感冒様の初発症状による肺出血などの発現に注意が喚起されている。

著者(発表者)
若林規良ほか
所属施設名
独立行政法人国立病院機構松江医療センター呼吸器科
表題(演題)
Propylthiouracil内服開始後35年後に肺胞出血を呈した1例
雑誌名(学会名)
日本老年医学会雑誌 49(5) 612-616 (2012.9)

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