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ジスチグミン臭化物によるコリン作動性クリーゼ

2015年5月掲載

薬剤 ジスチグミン臭化物末梢神経系用剤
副作用 コリン作動性クリーゼ
概要 67歳、女性。糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)にて近医に通院していた。腹痛、下痢を認め、6日後に冷汗、意識障害をきたし救急搬送となった。JCS-300で房室ブロックと洞性徐脈を認めた。酸素飽和度は40%であり、COPDの急性増悪と診断し、挿管、人工呼吸器管理後当院へ搬送となった。硫酸アトロピンは著効するも数分間で洞性徐脈から洞停止をきたしたため、体外式ペースメーカを挿入した。神経因性膀胱にてジスチグミン臭化物を内服しており、血清コリンエステラーゼ値の著明な低下、散瞳、唾液過多、下痢を認めたことから、コリン作動性クリーゼと診断した。硫酸アトロピンの持続投与にてコリンエステラーゼの上昇とともに徐脈は改善した。

監修者コメント

コリンエステラーゼ阻害薬であるジスチグミン臭化物(ウブレチド®)は神経因性膀胱や重症筋無力症などの治療薬として用いられている。本薬剤の重篤な副作用として、コリン作動性クリーゼがあり、縮瞳、徐脈、下痢、発汗、唾液分泌過多などの副交感神経刺激症状を主体とし、重症例では循環不全や呼吸不全を併発し、死に至る症例も報告されている。本症例は糖尿病性腎症の進行による腎機能の増悪により、ジスチグミン臭化物血中濃度が上昇したことにより発症したと考えられる。高齢者、特に腎機能障害患者でジスチグミン臭化物を内服している患者において、消化器症状を伴う徐脈や肺炎を認めた場合は、コリン作動性クリーゼを疑い適切な処置を行う必要がある。

著者(発表者)
三好真智子ほか
所属施設名
福井大学医学部附属病院循環器内科ほか
表題(演題)
徐脈性ショックの初期診断に難渋したコリン作動性クリーゼの1例
雑誌名(学会名)
心臓 47(2) 193-198 (2015.2)

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