グリセリン浣腸による溶血
2012年11月掲載
薬剤 | グリセリン浣腸消化器官用薬 |
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副作用 | 溶血 |
概要 | 63歳、男性、胆嚢炎の再発により腹腔鏡下胆嚢摘出術を予定した。術当日に通常の方法で術前処置のグリセリン浣腸120mLを施行したところ、患者は直後に肛門部痛を訴え、肛門からの僅かの出血を認めたが、何れも約15分で消失したため特別の処置を行わなかった。その後手術室に入室し、チオペンタール250mg、ロクロニウム40mg、レミフェンタニル0.5μg/kg/minで麻酔導入し、尿道に14Frカテーテルを留置したが、最初の流出尿が少量で鉄さび色を呈していた。尿道損傷、悪性高熱症を否定しえたので、溶血の発生を強く疑い1%ブドウ糖加リンゲル液の投与量を増加し、フロセミド10mL、2回静脈投与した。しかし、尿量の増加が見られず、血液検体の遠心分離により溶血と診断し、その原因をグリセリン浣腸と考えた。腎機能障害の予防のためにハプトグロビン4,000単位を静脈投与し、その後、尿の排出と尿色調の改善が認められたので、麻酔の覚醒を試みたところ覚醒に問題はなく、帰室しえた。術後は乳酸加リンゲル液180mL/hrの投与を継続、漸次減量し、第3病日に輸液を中止、第5病日に退院した。 |
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著者考察によれば、グリセリン浣腸は術前処置のひとつとして広く施行されているが、稀に直腸穿孔や急性腎不全などの重大な合併症を引き起こすことが知られている。グリセリン浣腸による溶血の発生機序は浣腸液の高浸透圧によると考えられ、直腸損傷や痔核の存在がリスクファクターとなる。グリセリン浣腸による溶血は稀であるが、高度の腎機能障害が発生する可能性があるため、尿色調が溶血を疑わせる所見を呈したときは迅速な対応が必要であるとの啓発がなされている。
- 著者(発表者)
- 竹本真理子ほか
- 所属施設名
- 昭和大学医学部麻酔科学講座
- 表題(演題)
- グリセリン浣腸により溶血をきたした1症例
- 雑誌名(学会名)
- 臨床麻酔 36(8) 1175-1178 (2012)
監修者コメント