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トシリズマブによる壊疽性筋膜炎

2013年1月掲載

薬剤 トシリズマブ生物学的製剤
副作用 necrotizing fasciitis/neutropenia
概要 65歳、女性。関節リウマチに15年間罹患、抗TNFα抑制薬を含む種々の抗リウマチ薬による治療で効果が得られないため、トシリズマブ(8mg/kg、毎4週)の治療を開始、改善が得られた。12回目の投与終了2週間後、左前腕部および左手掌の疼痛と紫斑を伴う腫脹のため来院、皮膚感染症治療のため入院した。入院時所見は体温36.9℃、血圧137/64mmHg、脈拍124回/分、CRP0.04mg/dL、Hg11.3g/dL、WBC5,300/μL(好中球4,900)、pt11.3×104/μL、血清CKは46IU/Lと上昇は見られず、肝腎機能及び血糖値は正常であった。入院3時間後、突然、全身状態が悪化、左前腕部の紫斑が拡大しショック状態に陥った。前腕部の試験切開により著名な壊死が確認され壊疽性筋膜炎と診断した。緊急にデブリドマンを施行、筋膜および筋肉の生検により皮下導管の炎症及び血栓症ならびに脂肪組織、線維中隔の壊死が明らかとなった。翌日、WBC(17,300、好中球15,200)、CRP(9.27mg/dL)が上昇、pt(8.6×104)も僅かに上昇、トロンビン時間(12.4)、活性化部分トロンボプラスチン時間(37.0s)の延長が認められた。膿培養でβ(A群)連鎖球菌が検出された。外科的デブリドマンにより患者の症状と創傷部位は改善し、これまでのところ外来治療で再発を見ていない。皮膚感染症は通常の感染症であるが、本症例は極めて重篤な壊疽性筋膜症に至り、トシリズマブによる好中球減少が関与した可能性がある。トシリズマブで治療を受けたRA患者は、その炎症性臨床検査値が隠蔽されるため注意が必要である。

監修者コメント

本剤はIL-6受容体を抑制する抗体医薬である。IL-6は急性期炎症反応を誘引するサイトカインであるため、その抑制により感染症の発見が遅れ、重篤化することがあるので添付文書の「警告」で注意が喚起されている。

著者(発表者)
Yoshida A et al
所属施設名
Dep. Rheumatol., Kawasaki Med. Sch.
表題(演題)
Necrotizing Fasciitis in a Patient with Rheumatoid Arthritis Treated with Tocilizumab
雑誌名(学会名)
Modern Rheumatology 22(2) 317-318 (2012)

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