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リピオドールによる肺炎

2014年8月掲載

薬剤 リピオドール診断用薬(体外診断用医薬品を除く)
副作用 肺炎
概要 65歳、男性。Ground glass opacity (GGO)を指摘され、診断と治療目的で手術の方針となり、他科にて術前にマーキングが施行された。針先が葉間を超えてリピオドール約0.2㏄を中葉内に注入・散布してしまったため、改めて右S6の病変部にマーキングした。翌日、Cアーム下に右S6区域切除を施行し、中葉内にリピオドールは残存したが経過観察とした。術直後の経過は順調で術後8日目に退院したが、12日目に発熱を来たし来院した。CTで中葉内にリピオドールと考えられる高吸収領域と周囲の肺炎像を認め、入院抗生剤治療を開始した。気管支鏡検査を施行したところ、内腔所見に異常を認めず、肺胞洗浄液の細菌培養は陰性であった。高吸収領域は次第に縮小し、半年後のCTで完全に消失した。

監修者コメント

リピオドールは主にリンパ系や子宮卵管の造影剤として用いられている。本症例では、肺のスリガラス状陰影(GGO)を手術にて確実に切除するため、リピオドールを用いたCTガイド下経皮的マーキングが施行された。しかし、切除範囲を超えてリピオドールが注入・散布されてしまったため、リピオドールの残存による肺炎を生じた。本症例のようにリピオドールを用いたマーキングを行う際には、リピオドールが残存すると肺炎を引き起こす可能性があることに注意し、マーキングの部位や残存を避ける切除範囲の検討などが必要である。

著者(発表者)
神谷一徳ほか
所属施設名
横浜市立市民病院呼吸器外科
表題(演題)
CTガイド下マーキング後にリピオドール残存による肺炎を来した1例
雑誌名(学会名)
日本呼吸器外科学会雑誌 28(3) 1-P11-8 (2014.4)

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