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リトドリン塩酸塩による薬剤性好酸球性肺炎

2014年7月掲載

薬剤 リトドリン塩酸塩泌尿生殖器官及び肛門用薬
副作用 薬剤性好酸球性肺炎
概要 31歳、女性。妊娠22週4日で子宮収縮が頻発し、切迫流産の診断で入院管理となった。子宮収縮抑制のためリトドリン塩酸塩の点滴治療を開始した。妊娠23週4日から呼吸苦を自覚し、鼻汁、発熱が出現したため細菌性肺感染症を疑い、抗菌剤内服、その後点滴治療に変更し、改善傾向を認めた。しかし、妊娠24週3日に咳嗽が出現し、好酸球数の上昇、好中球数の再上昇が認められ、胸部X-PとCTにて左中肺野、左舌区に肺炎像を認めた。喀痰細胞診でも好酸球が多数認められ、急性好酸球性肺炎と診断した。リトドリン塩酸塩以外の薬剤を中止したが、好酸球数のさらなる増加を認めたため、リトドリン塩酸塩による可能性が高いと考え、硫酸マグネシウムへと変更した。変更後は好酸球が劇的に減少し、以後上昇は認められなかった。リトドリン塩酸塩によるリンパ球刺激試験、薬剤誘発試験はいずれも陽性であった。

監修者コメント

選択的β2刺激剤であるリトドリン塩酸塩は、子宮筋に選択的に作用して子宮収縮を抑制するため、切迫早産の治療薬として用いられている。本症例では妊娠22週に切迫早産治療のためリトドリン塩酸塩の点滴治療を開始したところ、呼吸苦、鼻汁、発熱などの症状を発症した。末梢血中の好酸球増加および喀痰細胞診上の好酸球出現なども認めたため、急性好酸球性肺炎と診断された。リトドリン塩酸塩が原因と考えられる好酸球性肺炎は極めて稀であるが、本薬剤は切迫早産治療に一般的に繁用されているため、本薬剤投与中に呼吸苦、鼻汁、発熱などの症状を認めた場合には、末梢血液像の変動などにも注意する必要がある。

著者(発表者)
山田竜太郎ほか
所属施設名
JA北海道厚生連札幌厚生病院産婦人科ほか
表題(演題)
塩酸リトドリンの関与が疑われた薬剤性好酸球性肺炎の一例
雑誌名(学会名)
北海道産科婦人科学会会誌 58(1) 35-40 (2014.3)

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