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スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)によるメトヘモグロビン血症

2014年7月掲載

薬剤 スルファメトキサゾール・トリメトプリム化学療法剤
副作用 メトヘモグロビン血症
概要 41歳、女性。SLEに対してステロイドパルス療法等を施行されたが、腎機能障害が進行し貧血も生じたため、当科転院となった。SLE、ループス腎炎、血栓性微小血管障害症に対する治療を行った。第9病日にニューモシスティス肺炎予防のためスルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)を投与したところ、2日後にチアノーゼを生じ、SpO2低下はなくSaO2が94.7%と低下、メトヘモグロビン(MetHb)が5.7%と上昇した。ST合剤の副作用を疑い、内服を中止するとともに投与中であった酸素を増量した。MetHbはST合剤投与4日後に最大値となり、その後徐々に低下し、8日後に正常化するとともにSaO2も正常化した。

監修者コメント

メトヘモグロビンはヘモグロビンの2価の鉄イオンが3価に酸化され、酸素結合能を失ったものである。生成されたメトヘモグロビンは、生理的メトヘモグロビン代謝機構によって総Hb量の1%以下に保持されているが、メトヘモグロビンが1-2%以上へ増加した状態をメトヘモグロビン血症という。チアノーゼ・息切れがあるにもかかわらずそれに見合うSpO2低下がなく、その一方で血液ガスではSaO2が低下している場合にメトヘモグロビン血症が疑われる。ST合剤(バクタ®)により誘発されるメトヘモグロビン血症の報告は少ないが、ST合剤投与後にチアノーゼが生じていてもSpO2が正常な場合は、メトヘモグロビン血症の可能性を考慮する必要がある。

著者(発表者)
栃原まりほか
所属施設名
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター膠原病リウマチ内科
表題(演題)
SLE治療経過中にSaturation gapを呈して診断されたST合剤誘発性メトヘモグロビン血症の一例
雑誌名(学会名)
関東リウマチ 47 18-23 (2014.4)
第54回 関東リウマチ研究会 (2013.6.22)

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