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半夏瀉心湯による間質性肺炎

2024年4月掲載

薬剤 半夏瀉心湯漢方製剤
副作用 間質性肺炎
概要 【症例1】83歳、男性。声門上癌cT2N0M0に対して照射単独70Gy/35回の方針となった。30Gy/15回時点より半夏瀉心湯を投与開始したが、58Gy/29回時点で39℃の発熱とSpO2の低下を認めた。胸部CT上、有意な所見は認めなかったが、肺炎の診断で照射を中止し、呼吸器内科に紹介で入院加療となった。
【症例2】88歳、男性。舌癌術後pT3N2bM0の術後7ヵ月後の経過観察MRIで局所再発を指摘され、照射単独治療70Gy/35回の方針となった。治療開始直後から半夏瀉心湯が処方されたが、32Gy/16回時点で呼吸困難を自覚し救急搬送となった。
2症例とも肺野への照射は実施されていなかった。各種感染症検査はいずれも陰性であり、入院後再検した胸部CT上は両側肺野のびまん性網状影、すりガラス状影を認めた。【症例2】は治療前より間質性肺炎を疑う網状影を一部に認めていた。 心エコー検査等では心不全による肺水腫も否定的であった。抗生剤加療に反応せず、内服歴からは半夏瀉心湯による薬剤性間質性肺炎を疑われ、被疑薬の中止後にステロイドパルス療法(mPSL 1000mg/day×3日間)を実施した。パルス療法後、【症例1】は速やかな症状の改善を得たが、【症例2】は一時的な症状改善あったが再度増悪しパルス療法27日後に死亡した。

監修者コメント

半夏瀉心湯は、口内炎や下痢、胃炎などに対して使用される漢方薬である。本文献では、半夏瀉心湯により間質性肺炎を来した2例を報告している。特に症例2は一時的な症状改善あったものの再度増悪し、死亡となった。半夏瀉心湯による間質性肺炎は稀とされているが、本症例のように死亡例もあるため、投与中は慎重な経過観察を行い、呼吸障害を認めた際には、投与を中止して適切な処置を行うことが重要である。

著者(発表者)
小杉康夫ほか
所属施設名
順天堂大学放射線医学教室放射線治療学講座
表題(演題)
頭頸部癌放射線治療中に半夏瀉心湯により間質性肺炎を来した2例
雑誌名(学会名)
日本放射線腫瘍学会第36回学術大会報文集 323 (2023)
第36回 日本放射線腫瘍学会学術大会(2023.11.30-12.2)

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