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ロキサデュスタットによる粘液水腫性昏睡、中枢性甲状腺機能低下症

2024年4月掲載

薬剤 ロキサデュスタットその他の代謝性医薬品
副作用 粘液水腫性昏睡、中枢性甲状腺機能低下症
概要 90歳代、男性。末期腎不全で維持透析中。入院1ヵ月前より食思不振、活気不良が出現し、1週間前より異常行動を認め当院へ救急搬送、入院となった。脈拍40 bpm台と徐脈であり、第5病日にTSH 0.024μIU/mL、FT3 1.30 pg/mL、FT4 0.22 ng/mLと中枢性甲状腺機能低下症を認め当科紹介となった。原因としてロキサデュスタットの副作用を疑い、第5病日より内服を中止した。JCSII-20の意識障害およびPaCO2 48Torrの低換気、脈拍40 bpm台の循環不全を認め、粘液水腫性昏睡確実例と診断しLT4の静脈内投与を開始した。さらに相対的副腎不全予防目的にヒドロコルチゾンの静脈内持続投与を行った。治療開始後、意識レベルおよび全身状態の改善を認め、副腎不全徴候なく経過したため、ステロイドの漸減を行った。また甲状腺機能の改善に伴い第14病日にLT4を減量した。第22病日にTSH 0.468μIU/mL、FT3 1.51 pg/mL、FT4 0.82 ng/mLと改善を認め、第23病日にLT4を坐剤に変更し治療継続中である。

監修者コメント

低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬であるロキサデュスタットは腎性貧血の治療薬として用いられている。本症例は、ロキサデュスタットの関与が疑われた粘液水腫性昏睡の1例である。本薬剤は新たな腎性貧血治療薬として上市されたが、副作用として中枢性甲状腺機能低下症が報告されている。本症例のように粘液水腫性昏睡をきたした症例は極めて稀であり、貴重な症例といえる。

著者(発表者)
田中愛実ほか
所属施設名
埼玉県済生会加須病院糖尿病内分泌内科ほか
表題(演題)
ロキサデュスタットの関与が疑われた粘液水腫性昏睡の一例
雑誌名(学会名)
日本内分泌学会雑誌 99(2) 604 (2023)
第33回 臨床内分泌代謝Update(2023.11.3-4)

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