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ホスホマイシンナトリウムによる偽膜性腸炎

2024年4月掲載

薬剤 ホスホマイシンナトリウム抗生物質製剤
副作用 偽膜性腸炎
概要 7歳、女児。6日間続く腹痛、下痢症状を主訴に前医を受診した。便中ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス抗原はすべて陰性であった。急性胃腸炎疑いで整腸剤が処方され、症状は一時改善したものの腹痛が残存した。前医を再診し、ホスホマイシンナトリウム(FOM)を3日間内服したところ、症状が悪化し1日に10回程度の下痢や腹痛による夜間覚醒も認めた。便潜血陽性、便中カルプロテクチン高値であったため、炎症性腸疾患が疑われ、発症から1ヵ月後に当院に紹介となった。全大腸内視鏡検査では、直腸から盲腸にかけて浮腫状粘膜を呈し、偽膜が多発していた。病理所見では上行結腸から直腸にかけて強い炎症細胞の浸潤があり、表層には偽膜を認めた。典型的な内視鏡所見および病理所見から偽膜性腸炎と診断した。Clostridioides difficile(CD)トキシン陰性で便培養でもCDは検出されず、微生物学的な確定診断は得られなかったが、CD感染に伴う偽膜性腸炎と判断してメトロニダゾールの内服で加療を開始した。その後、腹痛は改善したため合計10日間でメトロニダゾールの内服を終了した。入院16日目に全大腸内視鏡検査を再検したところ、偽膜は消失し粘膜の血管透見性は改善していた。退院後も症状は再燃していない。

監修者コメント

急性下痢症に対するFOMの投与により偽膜性腸炎を発症した女児の1例である。FOMの投与により常在腸内細菌叢が破壊され、耐性を有するCDが増殖し、偽膜性腸炎を発症したと考えられる。小児の急性下痢症の原因の多くはウイルス性と考えられるが、本邦の外来診療では抗菌薬が処方されることが多い。広域抗菌薬の投与は短期間でも偽膜性腸炎の発症リスクを上げるため、注意が必要である。

著者(発表者)
成重勇太ほか
所属施設名
宮城県立こども病院総合診療科・消化器科ほか
表題(演題)
ホスホマイシンナトリウムの内服により偽膜性腸炎を発症した女児例
雑誌名(学会名)
小児科臨床 76(5) 727-730 (2023)

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