タモキシフェンによる網膜症
2024年4月掲載
薬剤 | タモキシフェン腫瘍用薬 |
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副作用 | 網膜症 |
概要 | 42歳、女性。乳癌術後に対してタモキシフェン20 mg/日の低用量内服を8年継続している。1ヵ月前から右眼の歪視を自覚し、近医で右眼に黄斑円孔様の所見を指摘されて当院に紹介受診となった。初診時の視力は右眼0.7、左眼1.2。右眼には光干渉断層計(OCT)にて中心窩のretinal cavityと網膜外層の欠損を認め、左眼でも右眼同様の所見がみられた。OCT angiographyでは、右眼に中心窩耳側の毛細血管拡張を疑う所見を認めた。タモキシフェン網膜症と診断し内服の中止を勧めたが、患者の希望でタモキシフェンの内服を継続した。8ヵ月の経過でretinal cavityと網膜外層欠損は遷延しているが、初診時よりは改善がみられている。経過中、右眼視力は0.6から1.0で変動するが明らかな悪化はなく、左眼視力は1.5が維持されていた。 |
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タモキシフェンは、乳癌術後の再発予防に使用される経口抗エストロゲン薬である。本症例は、乳癌術後に対するタモキシフェンの低用量内服により発症した網膜症の1例である。添付文書においても、重大な副作用として網膜症などによる視覚障害が記載されている。タモキシフェンの投与中に視力低下や視覚障害を認めた際には、眼科専門医を受診し、異常が認められた場合には投与の中止を検討すべきである。
- 著者(発表者)
- 小沼こころほか
- 所属施設名
- 東京慈恵会医科大学眼科学講座
- 表題(演題)
- タモキシフェン低用量内服により網膜症を呈した1例
- 雑誌名(学会名)
- あたらしい眼科 40(10) 1348-1353 (2023)
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