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アテゾリズマブによる硬化性胆管炎

2024年2月掲載

薬剤 アテゾリズマブ腫瘍用薬
副作用 硬化性胆管炎
概要 76歳、男性。肺扁平上皮癌術後補助療法のアテゾリズマブを初回投与4日後より、全身倦怠感・易疲労感、肝胆道系酵素の上昇も認めた。画像検査で総胆管拡張および胆嚢壁肥厚に加え、管内胆管の口径不同、分岐の鈍化を認めた。内視鏡的乳頭切開術を行い、抗菌薬治療を実施したが、肝胆道系酵素の改善は認めなかった。免疫関連有害事象(以下irAE)による硬化性胆管炎(以下irAE-SC)としてPSLを開始したところ、自覚症状・肝胆道系酵素は改善した。しかし、PSLを減量中に多発肝膿瘍を発症した。抗菌薬の全身投与を行いつつPSLを漸減終了した結果、肝膿瘍の制御に至った。PSL終了から2ヵ月後も、irAE-SCの明らかな再燃は認めていない。

監修者コメント

抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブは、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)として、肺癌などの治療に用いられている。本症例は、アテゾリズマブによるirAEとして、硬化性胆管炎を発症した1例である。ICIの普及に伴い、irAEは広く認識されてきたが、アテゾリズマブ関連の硬化性胆管炎は稀な有害事象である。irAE-SCに対するステロイドや免疫抑制剤の有効性も十分に確立されておらず、本症例のように多発肝膿瘍を発症する症例の報告もある。今後の症例の集積により、irAE-SCに対する予防や治療に関する対策が確立されることが期待される。

著者(発表者)
神宮大輔ほか
所属施設名
宮城厚生協会坂総合病院呼吸器科
表題(演題)
アテゾリズマブ術後補助療法初回投与後に硬化性胆管炎を発症し,多発肝膿瘍を呈した肺扁平上皮癌の1例
雑誌名(学会名)
肺癌 63(5) 591 (2023)
第64回 日本肺癌学会学術集会(2023.11.2-4)

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