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ダパグリフロジンによる低Na血症、高K血症、塩類喪失性腎症

2024年2月掲載

薬剤 ダパグリフロジンその他の代謝性医薬品
副作用 低Na血症、高K血症、塩類喪失性腎症
概要 61歳、男性。X年1月に肘痛のため近医でセレコキシブを処方された。X月Y日午前中に赤褐色の吐血が2回あり、その後ふらつきが出現したため同日午後当院外来を受診した。BP 73/50mmHgの循環血液量減少性ショックに対し細胞外液を大量投与した。血圧の改善後にEGDを施行し胃潰瘍を認めた。自然止血後であり輸血は必要なかった。入院後は補液とPPIの静注を行いY+3日EGD再検後に食事再開した。Y+7日の血液検査で貧血は進行なく腎機能も改善傾向であったが、腎機能低下の残存があり非糖尿病合併CKDとしてY+9日ダパグリフロジン10mgを新規に開始した。Y+10日より急速に腎機能が悪化し高K、低Na血症を発症した。薬剤性を疑いY+14日ダパグリフロジン中止後それらは改善しY+21日に退院となった。精査鑑別を行い塩類喪失性腎症による低Na血症と診断した。

監修者コメント

選択的SGLT2阻害薬であるダパグリフロジンは、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病(CKD)の治療薬として用いられている。本症例は、胃潰瘍治療後に残存する非糖尿病合併CKDに対して投与したダパグリフロジンにより、塩類喪失性腎症による低Na血症を発症した稀な1例である。本症例のように亜急性期におけるSGLT2阻害薬の導入は副作用のリスクが高いため、適応の慎重な判断とフォローアップが重要である。

著者(発表者)
井上智博ほか
所属施設名
思誠会渡辺病院ほか
表題(演題)
胃潰瘍治療中のSGLT2阻害薬開始で低Na血症となった1例
雑誌名(学会名)
第129回日本内科学会中国地方会(抄録集) 1 (2023)
第129回 日本内科学会中国地方会 (2023.10.21)

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