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サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物によるネフローゼ症候群、FSGS

2024年1月掲載

薬剤 サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物循環器官用剤
副作用 ネフローゼ症候群、FSGS
概要 70歳代、男性。X-2年1月に中等度大動脈弁閉鎖不全症と慢性心不全の指摘があり、バルサルタン投与が開始されていた。X年8月に心不全管理のため当院循環器内科を受診し、バルサルタンからエンレスト(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤:以下ARNI、一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)へ変更となったが、切り替え後急速に下腿浮腫が出現、増悪した。その後同年9月に腎臓内科に紹介となった。受診時Alb 1.8 mg/dL、尿蛋白10.3 g/dayとネフローゼ症候群を認めており、同月に腎生検を実施した。腎生検では採取された糸球体18個のうち5個が全節性硬化を示し、残り13個中6個で分節性の基質増生を認めた。間質内には巣状となった小円形細胞浸潤と萎縮尿細管が認められ、蛍光抗体法では基質増生部を中心にIgM、C3の沈着が認められた。その他原因検索の後、ARNIによる二次性FSGSと診断した。3ヵ月の休薬後も尿蛋白の改善に至らず腎機能障害が進行したため、PSL内服を開始した。

監修者コメント

ARNIであるエンレスト(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)により急速にネフローゼ症候群を発症した1例である。ARNIは、ネプリライシンとレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を同時に阻害する薬剤であり、慢性心不全および高血圧症の治療薬として用いられている。本薬剤開始後のネフローゼ症候群発症についてはこれまでに報告がないが、注意すべき副作用の1つといえる。

著者(発表者)
松永貴弘ほか
所属施設名
富山赤十字病院
表題(演題)
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤(ARNI)投与後急速にネフローゼ症候群を発症した1例
雑誌名(学会名)
The Japanese Journal of Nephrology:日本腎臓学会誌 65(6-W) 802 (2023)
第53回 日本腎臓学会西部学術大会(2023.10.7-8)

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