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ダパグリフロジンによる高P血症、FGF23作用不全

2023年12月掲載

薬剤 ダパグリフロジンその他の代謝性医薬品
副作用 高P血症、FGF23作用不全
概要 27歳、女性。前駆B細胞急性リンパ性白血病の第二再発で入院した。寛解導入療法・同種造血幹細胞移植後に高サイトカイン血症や、薬剤による腎障害と心不全を発症した。心機能はβ遮断薬使用下でも改善に乏しく、ダパグリフロジンが追加された。導入後3週間より高P血症を呈し(P 6.0 mg/dL)、TmP/GFRも5.7 mg/dL(基準値:2.3~4.3 mg/dL)と高値だったものの、FGF23も119 pg/mL(基準値:<30 pg/mL)と高値を呈した。Ca、iPTHはそれぞれ9.4 mg/dL、16.2 pg/mLと変化なく、25(OH)ビタミンDは7.9 ng/mLと低値だった。経時的な心機能改善を確認した上でダパグリフロジンを中止したところ、血清P値とFGF23は速やかに低下した。

監修者コメント

Sodium glucose co-transporter 2阻害薬(SGLT2i)であるダパグリフロジンは、糖尿病治療薬であると同時に心腎保護効果を有し、慢性心不全や慢性腎臓病にも有効である。本症例は、造血幹細胞移植後の慢性心不全に対して投与したダパグリフロジンにより高P血症を来した稀な1例である。SGLT2iによる高P血症は、Na排泄増加に対して代償性にNa/P共輸送体が活性化し、P再吸収が亢進することが原因と考えられている。さらに本症例では、血清P値を低下させるFGF23 が高値であるにも関わらず尿中P排泄増加を認めず、FGF23の作用不全が示唆されている。本薬剤の添付文書に電解質異常の記載はないが、投与時は高P血症に注意すべきである。

著者(発表者)
清水歩美ほか
所属施設名
東京都立小児総合医療センター腎臓・リウマチ膠原病科ほか
表題(演題)
造血幹細胞移植後の慢性心不全に対するダパグリフロジンにより高P血症をきたした一例
雑誌名(学会名)
第44回 日本小児体液研究会プログラム・抄録集 22 (2023)
第44回 日本小児体液研究会(2023.9.9)

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