メチルプレドニゾロンによる単純ヘルペスウイルス肝炎、HBV-DNA陽性化
2014年4月掲載
薬剤 | メチルプレドニゾロンホルモン剤(抗ホルモン剤を含む) |
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副作用 | 単純ヘルペスウイルス肝炎、B型肝炎ウイルスDNA陽性化 |
概要 | 55歳、女性。HBV既往感染者であることを確認後、バセドウ病眼症に対してメチルプレドニゾロンによるステロイドパルス療法を第1-3病日、第8-10病日に施行した。第18病日より38℃台の発熱と胸腹部の小丘疹が出現し、第19病日に肝障害を認めたが、HBV-DNAは検出限界以下であった。第20病日に当科紹介入院となり、HBV-DNAは2.8 log copies/mLと陽性化を認めた。HBVが急性肝障害の原因とは考え難く、精査により単純ヘルペスウイルス(HSV)による肝炎と診断した。その後、HSV肝炎の改善とともにHBV-DNAは速やかに陰性化した。 |
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近年、B型肝炎ウイルス(HBV)既往感染者に対して化学療法や免疫抑制療法を行った際にHBVの再活性化、急性肝炎を来すde novo肝炎が注目されている。本症例においてもHBVの再活性化によるde novo肝炎の可能性が考えられたが、肝障害出現時にHBV-DNA、HBs抗原がともに陰性であったことや、ステロイドパルス療法開始から18日目と非常に短期間であったことなどから、肝障害については、単純ヘルペスウイルス(HSV)によるものと診断された。HBV-DNAの再陽性化は、ステロイド投与により肝細胞内で増殖したHBV-DNAが、HSV肝炎による肝細胞破壊によって血中に逸脱した可能性が示唆されている。ステロイド単剤によってHBV既往感染者においても再活性化が起こり、HSV肝炎による肝細胞破壊により血中HBV-DNAが再陽性化することを示した大変興味深い報告である。
- 著者(発表者)
- 宮川恒一郎ほか
- 所属施設名
- 産業医科大学医学部第3内科
- 表題(演題)
- ステロイドパルス療法直後に単純ヘルペスウイルス肝炎を発症し、一過性に血中B型肝炎ウイルスDNAの陽性化を認めたB型肝炎ウイルス既往感染者の1例
- 雑誌名(学会名)
- 肝臓 55(1) 51-56 (2014.1)
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