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カナマイシン、アミカシン硫酸塩による薬疹

2023年11月掲載

薬剤 カナマイシン抗生物質製剤
アミカシン硫酸塩抗生物質製剤
副作用 薬疹
概要 61歳、女性。咳嗽のため2008年に近医を受診し、肺Mycobacterium avium complex(MAC)症の診断となった。その後のクラリスロマイシン長期治療歴のためマクロライド耐性があり、2017年8月に標準治療に追加してカナマイシン(KM)筋注行った。投与2日後に前胸部と背部に広範囲に皮疹が出現し、KM筋注製剤による薬疹が疑われ中止となった。その後も排菌が持続し、中葉舌区切除を行い術直後に排菌は陰性化したが、約1年後に排菌が再確認された。患者本人の治療希望が強く、KM筋注製剤と同様のアミノグリコシド系ではあるものの、副作用等理解のうえアミカシン硫酸塩吸入用製剤(ALIS)を投与する方針とした。入院下でALISを導入したが、治療2日目にKM注射部位と同部位に皮疹が出現し、再びアミノグリコシド系薬剤に対するアレルギーが確認された。ステロイドを5日間投与して皮疹は改善した。

監修者コメント

マクロライド耐性の肺MAC症に対しては、アミカシン(AMK)やKMを含めたアミノグリコシド系薬剤による治療が重要である。本症例は、KM筋注による皮疹の既往のある肺MAC症患者において、ALIS吸入により同様の皮疹をきたした1例である。ALISの血中への移行率は低く、点滴のAMKと比較して血中移行するAMKは微量であるが、アミノグリコシド系薬剤は化学構造が類似しているため、薬剤交差性によりアレルギー反応が出現したと考えられた。KM筋注製剤に対するアレルギー反応はALIS吸入でも交差反応することがあり、注意が必要である。

著者(発表者)
石田有莉子ほか
所属施設名
神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器科
表題(演題)
カナマイシン筋注製剤による皮疹の既往がありアミカシン硫酸塩吸入用製剤でも皮疹をきたした肺Mycobacterium avium complex症の1例
雑誌名(学会名)
結核 98(5) 155-158 (2023)

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