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プロピルチオウラシルによる薬剤性過敏症症候群

2014年4月掲載

薬剤 プロピルチオウラシルホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)
副作用 薬剤性過敏症症候群(DIHS)
概要 56歳、女性。甲状腺機能亢進症の診断を受け、プロピルチオウラシル、テプレノンの内服を開始した。その後、瘙痒が出現したためオキサミドを、発熱に対してはロキソプロフェンナトリウムを内服した。発熱の4日後より体幹に紅斑が出現し、徐々に拡大した。38℃台の発熱、全身の瘙痒を伴う浮腫性紅斑、眼球結膜充血、粘膜のびらんを認めたが、表皮壊死は認めなかった。内服薬を中止し、ステロイドパルス療法、プレドニゾロンの内服により改善が得られ、治療開始50日目にプレドニゾロンを投与中止した。その後、再燃なく経過している。DLSTの結果はロキソプロフェンナトリウムのみ陽性であったが、念のためプロピルチオウラシルの1/10量の内服誘発試験を行ったところ、発熱、紅斑、肝障害が発現した。HHV6-IgG抗体は4倍以上に上昇した。以上よりプロピルチオウラシルによる薬剤性過敏症症候群(DIHS)と診断した。

監修者コメント

薬剤性過敏症症候群(DIHS)は、抗てんかん薬などの限られた薬剤の投与後に遅発性に生じ、原因薬剤を中止後も遷延する重症の薬疹であり、38℃以上の高熱や肝機能障害などを伴う。本症例では、プロピルチオウラシル(チウラジール®)の投与によりDIHSを生じており、稀な一例といえる。本薬剤に対するDLSTは陰性であったため、当初は原因薬剤と考えられていなかったが、念のために行った少量の内服誘発試験によって本薬剤による DIHSと診断された。重症薬疹では危険性が高いため、安易に内服誘発試験を行うべきではないが、DLSTのみで原因薬剤を判定した場合、甲状腺機能亢進症にプロピルチオウラシルを通常量内服し、再度重篤なDIHSを引き起こしていた可能性がある。 DLSTには疑陽性、疑陰性があるため、DLSTが陰性であっても原因薬剤の可能性があることを念頭に置き、慎重に対処する必要がある。

著者(発表者)
松澤美幸ほか
所属施設名
山梨大学医学部皮膚科学教室ほか
表題(演題)
プロピルチオウラシル(チウラジール錠)によるDIHS
雑誌名(学会名)
皮膚病診療 36(2) 159-162 (2014.2)

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