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ミノサイクリンによる血小板減少症

2023年10月掲載

薬剤 ミノサイクリン抗生物質製剤
副作用 血小板減少症
概要 80歳、女性。舌部分切除施行歴、疼痛コントロール目的で入院歴がある。今回、胃痛と嘔吐を繰り返し腸炎疑いで再入院となった。腸炎改善後、第16病日より舌がんの根治目的で放射線療法を開始することとなった。放射線療法により腫瘍は縮小傾向にあったが、第62病日に発熱を認め誤嚥性肺炎が疑われ治療が開始となった。放射線療法は中断することとなったが、第70病日に再開し第72病日に完遂することができた。その後も誤嚥性肺炎に対し治療を継続するも効果が乏しく、第94病日にバンコマイシン塩酸塩(VCM)注とセフメタゾールナトリウム(CMZ)注の併用に変更した。痰培養よりEnterobacter cloacaeが同定され、第106病日にミノサイクリン(MINO)注へ変更したが、MINO投与14日目に血小板数が2万/µLへ低下した(MINO開始前:22.0万/µL)。MINOを投与していた期間、及びVCMとCMZ投与期間内に新規開始薬、中止薬はなく、薬剤師はMINOが被疑薬と考え医師に中止を提案し投与終了となった。中止した翌日の検査値より血小板数が改善傾向に転じ、皮膚の内出血の自覚症状や過度に出血する傾向はなかった。重篤な血小板減少が改善し状態が安定したため、外来でフォローする方針となったが、患者が在宅医療を希望したため、以降は訪問診療を実施する近医で経過観察することとなった。

監修者コメント

テトラサイクリン系抗菌薬のMINOは、肺炎や蜂窩織炎などの治療に用いられている。本症例は肺炎の治療として開始されたMINO投与中に血小板減少を認め、MINOの中止によって改善したことから、MINOによる薬剤性血小板減少症と考えられている。稀ではあるが、MINOの投与中に血小板減少症を発症する可能性があるため、血小板の推移にも注意する必要がある。

著者(発表者)
冨田詩織ほか
所属施設名
関西医科大学附属病院薬剤部ほか
表題(演題)
ミノサイクリン投与中に血小板減少症を発現した一症例
雑誌名(学会名)
Yakugaku Zasshi 143(5) 477-479 (2023)

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