リトドリン塩酸塩による高カリウム血症
2023年8月掲載
薬剤 | リトドリン塩酸塩泌尿生殖器官及び肛門用薬 |
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副作用 | 高カリウム血症 |
概要 | 24歳、女性。自然周期で一絨毛膜二羊膜双胎が成立した。妊娠32週に切迫早産に対してニフェジピン内服ならびにリトドリンの持続静脈内投与が開始された。妊娠37週6日にリトドリン投与が中止された後に帝王切開術が施行された。術後1時間に施行した血液検査で血中カリウム7.6mmol/Lと高値であり、心電図でT波の増高が認められた。速やかにカルシウム製剤投与による心筋保護とグルコース・インスリン療法が開始され、術後26時間で基準値内まで改善した。 |
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リトドリン塩酸塩は、切迫流・早産の治療に用いられる子宮収縮抑制薬である。本症例はリトドリン塩酸塩の投与中止後の帝王切開術後に高カリウム血症を来した 1例である。本薬剤はβ2刺激作用により細胞内へのカリウム取り込みを増加させ、低カリウム血症を発症しうることは広く知られているが、高カリウム血症を来す症例は稀である。本薬剤の中止に伴う細胞内カリウムの細胞外への再分布の可能性が示唆されている。本薬剤の持続静脈内投与後の帝王切開術においては、高カリウム血症を生じる可能性を考慮し、心電図変化などにも注意すべきである。
- 著者(発表者)
- 田山親吾ほか
- 所属施設名
- 熊本大学大学院生命科学研究部産科婦人科学講座
- 表題(演題)
- 塩酸リトドリン投与中止後の帝王切開術後に高カリウム血症を来した1例
- 雑誌名(学会名)
- 熊本産科婦人科学会雑誌 (67) 135-136 (2023)
第242回 熊本産科婦人科学会学術講演会(2023.3.4)
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