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シスプラチンによるRenal Salt-Wasting Syndrome

2014年4月掲載

薬剤 シスプラチン腫瘍用薬
副作用 Renal Salt-Wasting Syndrome
概要 83歳、男性。胸部食道癌に対してFP療法(シスプラチン+フルオロウラシル)を施行し、CRとなっていた。化学療法終了から17ヵ月後に腫瘍再発による食道狭窄を来たしmetallic stentを留置することとなった。FP療法を施行後の絶食期間中に維持輸液を行ったところ、血清Na濃度が123 mEq/Lまで低下し、全身倦怠感の訴えがみられた。原因の精査を行ったところSIADHを含め諸疾患を示唆する所見は認められず、尿中排泄率の抑制がみられなかったことから、 Renal Salt-Wasting Syndromeと診断した。積極的にNaClの投与量を増やすことにより、血清Na濃度の低下がみられなくなり、その後、低Na血症の症状はみられずに経過した。

監修者コメント

近年、低Na血症の新しい病態としてRenal Salt-Wasting Syndrome (RSWS)が注目されている。RSWSはSIADHと混同されやすく、病態の認知度が高くないため診断が困難である。RSWSでは、脱水が存在し体重減少がみられること、腎機能障害を認めること、Na 摂取に比較して明らかに尿中Na 排泄量が多いことなどがSIADHとの鑑別に重要である。本症例においても尿中Na排泄率の抑制が見られなかった。シスプラチンなどによる化学療法施行中に低Na血症を呈する代表的疾患としてSIADHを考慮することが多いが、今後はその原因としてRSWSの可能性も念頭におく必要がある。

著者(発表者)
坂谷彰彦ほか
所属施設名
大手前病院消化器内科ほか
表題(演題)
食道癌に対する化学療法後に著明な低Na血症を呈しcisplatinによるRenal Salt-Wasting Syndromeと診断した1例
雑誌名(学会名)
日本消化器病学会近畿支部 第100回 例会 プログラム・抄録集 99 (2014)
第100回 日本消化器病学会近畿支部例会 (2014.2.22)

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