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アテゾリズマブによる全身性強皮症様皮膚硬化

2023年7月掲載

薬剤 アテゾリズマブ腫瘍用薬
副作用 全身性強皮症様皮膚硬化
概要 83歳、男性。間質性肺炎合併肺扁平上皮癌に対して、初診の2年前より3週間おきにアテゾリズマブ投与中であった。初診1ヵ月前より体幹四肢のそう痒、両下腿の疼痛を伴う浮腫が出現し当科を受診した。初診時、手指から前腕、足背から下腿、体幹に皮膚硬化を認めたが、爪郭毛細血管異常は認めず、経過中レイノー現象は伴わなかった。抗核抗体および全身性強皮症(SSc)関連自己抗体はいずれも陰性であった。前腕の皮膚硬化部から行った皮膚生検では表皮に著変なく、脂肪織直上から表皮直下に及ぶ膠原線維の増生を認め、膠原線維間にリンパ球を中心とした炎症細胞浸潤を伴った。免疫関連有害事象(immune-related adverse event:irAE)として生じたSSc様の皮膚硬化と診断した。
副腎皮質ステロイド外用を行ったが改善を認めず、アテゾリズマブを中止とした上で初診4ヵ月後よりPSLの投与を開始した。PSL開始後1ヵ月でModified Rodonan’s total skin thickness score(mRSS)38点から31点まで改善したものの、それ以上の改善は見られずPSLを漸減中止した。

監修者コメント

抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブは免疫チェックポイント阻害薬として肺癌などの治療に用いられている。本症例は肺扁平上皮癌に対してアテゾリズマブを投与したところ、免疫関連有害事象(irAE)と考えられるSSc様の皮膚硬化を呈した稀な1例である。本症例はレイノー現象を伴わず、SSc関連自己抗体が陰性であり、臓器障害や血管障害を伴わないことから、irAEとして生じたSSc様の病態と考えられた。今後も免疫チェックポイント阻害薬の使用は増加することが予想されるため、本症例のような有害事象が起こる可能性があることを認識すべきである。

著者(発表者)
乙竹泰ほか
所属施設名
横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学
表題(演題)
肺扁平上皮癌に対してアテゾリズマブ投与中に免疫関連有害事象と考える全身性強皮症様の皮膚硬化を呈した1例
雑誌名(学会名)
第67回 日本リウマチ学会総会・学術集会プログラム・抄録集 833 (2023)
第67回 日本リウマチ学会総会・学術集会(2023.4.24-26)

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