タモキシフェンによる類内膜癌
2023年6月掲載
薬剤 | タモキシフェン腫瘍用薬 |
---|---|
副作用 | 類内膜癌 |
概要 | 62歳、女性。他院で50歳時に子宮全摘+両側付属器切除術を受けた。子宮内膜症による癒着で凍結骨盤であった。両側の卵巣に内膜症性嚢胞を認めた。51歳で乳癌手術を施行され、術後内分泌療法として5年間タモキシフェン(以下TAM)を内服した。内服終了3年後、直腸の左脇に3cm大の嚢胞性病変を指摘されたため当院へ紹介となった。嚢胞性病変内には充実性部分は認めず経過観察を行ったが、その後直腸の右脇にも同様の病変が出現し、内部に充実性部分を認めた。次第に疼痛も出現したため、当院外科で腹腔鏡下直腸低位前方切除術を施行され、腫瘍を摘出した。腹腔内には他に病変は認めなかった。 腫瘍は病理検査で類内膜癌と診断された。病変の周囲には内膜症が認められ、腸管内膜症からの発生が推測された。PET/CTで遠隔転移やリンパ節腫大を認めなかった。化学療法の追加を勧めたが、同意が得られず経過観察となった。 |
---|
TAMは乳癌の治療薬として広く使用されているが、重要な有害事象として子宮内膜癌の発症リスクが増加することが報告されている。本症例は、子宮摘出後の腸管子宮内膜症の癌化にTAMが関与したと考えられる類内膜癌の1例である。腸管子宮内膜症の癌化は0.79%と非常に稀である。また、腸管子宮内膜症がTAMにより癌化したという報告はこれまでになく、極めて稀な1例といえる。
- 著者(発表者)
- 小田切哲二ほか
- 所属施設名
- JA北海道厚生連旭川厚生病院産婦人科ほか
- 表題(演題)
- 直腸子宮内膜症の癌化にタモキシフェンが関与したと考えられる類内膜癌の一例
- 雑誌名(学会名)
- 第44回 日本エンドメトリオーシス学会学術講演会プログラム・抄録集 117 (2023)
第44回 日本エンドメトリオーシス学会学術講演会(2023.1.21-2.28)
監修者コメント