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トラニラストによる好酸球性膀胱炎

2023年5月掲載

薬剤 トラニラストアレルギー用薬
副作用 好酸球性膀胱炎
概要 70歳、男性。2020年10月より背部II度熱傷後瘢痕に対しトラニラスト内服を開始。2021年7月より肉眼的血尿、頻尿が出現した。近医にて膀胱炎の診断で抗生剤処方されるも軽快せず、同年10月に当院紹介受診となった。膀胱鏡にて膀胱壁のびまん性浮腫状変化および散在性の発赤病変があり、壁外浸潤なしの膀胱癌が疑われたため、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)目的に同年11月当科入院となった。TURBTの病理組織学的検査の結果、腫瘍性病変を示唆する所見はなく、好酸球や形質細胞を主体とした炎症性細胞が膀胱間質に浸潤しており、好酸球性膀胱炎の診断に至った。好酸球性膀胱炎の原因として薬剤性を第一に疑い、トラニラストの内服を中止したところ、2週間で下部尿路症状の軽快および膀胱粘膜の改善を認め、その後再発を認めていない。

監修者コメント

抗アレルギー薬であるトラニラストにより好酸球性膀胱炎を発症した1例である。好酸球性膀胱炎は膀胱粘膜から筋層にかけての好酸球浸潤を特徴とした比較的稀な炎症性疾患であり、本症例のように浸潤性膀胱癌との鑑別を要することがある。誘因としては、アレルギー疾患、薬剤、膀胱癌、尿路感染症などが報告されているが、薬剤としては抗アレルギー薬や漢方薬などがあげられている。本薬剤の投与中に頻尿や血尿などの症状を認めた場合は、好酸球性膀胱炎も念頭に置き、適切な処置を行う必要がある。

著者(発表者)
田中亮ほか
所属施設名
東京警察病院泌尿器科ほか
表題(演題)
トラニラストによる好酸球性膀胱炎の1例
雑誌名(学会名)
泌尿器外科 36(1) 78-81 (2023)

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