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ウステキヌマブによる神経・筋サルコイドーシス顕在化

2022年11月掲載

薬剤 ウステキヌマブその他の代謝性医薬品
副作用 神経・筋サルコイドーシス顕在化
概要 72歳、女性。2017年(69歳時)に尋常性乾癬を発症し、2019年に体幹筋と四肢近位筋の軽度筋力低下、creatine kinase(CK)軽度上昇があった。2020年に眼・肺サルコイドーシスの診断を受けていた。2020年9月から乾癬の悪化に対し抗IL-12/23抗体製剤であるウステキヌマブを使用後、呼吸苦と体幹・四肢近位筋の筋力低下が悪化し、2021年当科に入院した。
筋病理で非乾酪性類上皮肉芽腫と、多くの筋線維にmajor histocompatibility complex class Iの高発現がみられ、軸索障害所見、針筋電図で近位筋の安静時自発放電を伴う筋原性変化があることから、神経・筋サルコイドーシスと診断した。ウステキヌマブ中止とプレドニゾロンによる治療で症状は軽快し退院した。2021年9月現在、プレドニゾロン12.5mg/日で再増悪はない。

監修者コメント

乾癬の悪化に対して投与された抗IL-12/23抗体製剤であるウステキヌマブにより神経・筋サルコイドーシスが顕在化した稀な1例である。サルコイドーシスは、免疫学的機序により全身の臓器に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が形成される原因不明の疾患である。近年汎用されるようになった様々な生物学的製剤によりサルコイドーシスを発症する症例が報告されているが、これまでに神経・筋病変の報告はない。ウステキヌマブによりIL-12とIL-23の活性が阻害されたことで、神経・筋サルコイドーシスが顕在化したと考えられ、サルコイドーシスの発症や悪化に関与する免疫病態を解明する上で貴重な1例といえる。

著者(発表者)
佐野宏徳ほか
所属施設名
山口大学大学院医学系研究科臨床神経学
表題(演題)
抗IL-12/23抗体製剤使用中に顕在化した神経・筋サルコイドーシスの72歳女性
雑誌名(学会名)
臨床神経学 62(6) 475-480 (2022)

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