酢酸リュープロレリンによる卵巣過剰刺激症候群
2014年3月掲載
薬剤 | 酢酸リュープロレリンホルモン剤(抗ホルモン剤を含む) |
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副作用 | 卵巣過剰刺激症候群(OHSS) |
概要 | 38歳、女性。卵巣嚢腫、子宮筋腫を指摘されて当科を紹介初診した。骨盤部MRIで両側卵巣に多房性嚢胞性腫瘤を認め、子宮後壁に子宮筋腫を認めた。両側卵巣粘液性嚢胞腺腫および子宮筋腫と診断し、腹腔鏡下手術の方針とした。術前に子宮筋腫を縮小する目的で、酢酸リュープロレリンを投与した。投与後29日目に両側卵巣嚢腫は急速増大を呈し、CA125の上昇を認めた。悪性卵巣腫瘍を疑い、術中迅速病理組織検査を併用した開腹手術を施行した。卵巣の病理組織検査では漿液性嚢胞腺腫と多房性卵胞嚢胞の診断であり、GnRHa投与後のflare up現象により卵巣過剰刺激症候群を発症したと考えられた。術後経過は問題なく、術後10日目に退院した。 |
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子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術の普及もあり、子宮筋腫を縮小させる目的でGnRHアゴニストであるリュープロレリンが広く使用されるようになった。 GnRHアゴニストの副作用として、卵巣が過剰に刺激されることで卵巣腫大をきたす卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が知られている。本症例では腹腔鏡下手術前に子宮筋腫を縮小させる目的でリュープロレリンを投与したところ、両側卵巣嚢腫の急速な増大を認めた。悪性卵巣腫瘍を疑い開腹手術が施行されたが、病理組織検査にて漿液性嚢胞腺腫と多房性卵胞嚢胞と診断され、GnRHアゴニスト投与後のflare up現象によるOHSSを発症したと考えられた。GnRHアゴニスト製剤を投与後、短期間に卵巣腫大をきたした場合は、稀ではあるがOHSSの発症も念頭において対応すべきである。
- 著者(発表者)
- 井槌大介ほか
- 所属施設名
- 浜の町病院産婦人科
- 表題(演題)
- 酢酸リュープロレリン投与後に卵巣過剰刺激症候群を呈した一例
- 雑誌名(学会名)
- 共済医報 62(4) 321-325 (2013.11)
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