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テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムによる大球性貧血

2022年8月掲載

薬剤 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム腫瘍用薬
副作用 大球性貧血
概要 75歳、女性。食欲低下と尿の黄染で受診した。T-Bilの異常高値であったため肝障害で入院となった。肝障害の原因は不明であったが、重度の肝障害に対してビリルビン吸着療法、血漿交換療法を施行した。腹部造影CTで膵体尾部に腫瘍性病変を認め、胃・左腎臓への浸潤が見られた。黄疸が改善した1ヵ月後に手術を施行した。病理組織学的診断はInvasive ductal carcinomaであり、術後化学療法としてTS-1の内服を行った。4ヵ月経過後大球性貧血の進行が見られた。Vit B12、葉酸の投与を行ったが貧血は徐々に進行した。TS-1が原因の可能性があると考え、中止して補助化学療法をゲムシタビンに変更したところTS-1中止後よりHb、MCVの改善が見られた。

監修者コメント

テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)は、5-FUのプロドラッグであるテガフールをベースに、5-FUが分解されるのを防ぐギメラシルと消化管障害を軽減するオテラシルカリウムを配合した経口の抗腫瘍薬である。胃癌、大腸癌、膵癌、胆道癌などの治療薬として効果をあげている。本文献では、TS-1の投与により、大球性貧血を認めた膵癌の1例を報告している。本薬剤による大球性貧血は稀であるが、投与中は定期的な血液検査により慎重な経過観察を行うことが重要である。

著者(発表者)
小野山裕亮
所属施設名
自衛隊舞鶴病院
表題(演題)
膵癌の術後補助化学療法としてのTS-1により大球性貧血を認めた1例
雑誌名(学会名)
日本消化器病学会近畿支部第116回例会プログラム・抄録集 131 (2022)
第116回 日本消化器病学会近畿支部例会(2022.2.5)

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