NSAIDsによる大腸潰瘍穿孔
2014年3月掲載
薬剤 | メロキシカム中枢神経用薬 フルルビプロフェン中枢神経用薬 ロキソプロフェン中枢神経用薬 ジクロフェナク中枢神経用薬 |
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副作用 | 大腸潰瘍穿孔 |
概要 | 78歳、男性。左肺扁平上皮癌に対して放射線加療を施行中に左下肢痛が出現し、左坐骨神経周囲軟部組織への転移を認めた。麻薬およびNSAIDs等の鎮痛剤を投与し、同部位への放射線加療を行った。疼痛はメロキシカム、プレガバリン、フェンタニル、アセトアミノフェンをベースにコントロールされていた。その後、発熱等に対して随時フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、ジクロフェナク等が投与された。治療開始第24病日に40℃の発熱および腹部膨満が出現し、第28病日のCTで著明な腹腔内遊離ガスと腹水を認め当科紹介、腸穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を行った。開腹時、横行結腸中央部と肝弯曲寄りに穿孔部を認め、さらに多数の潰瘍を認めた。病理結果では、非特異的大腸潰瘍の穿孔であり、NSAIDsが誘因と考えられた。術後は合併症なく経過し、術後第26病日に緩和ケア目的に退院した。 |
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非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)は上部消化管のみならず、下部消化管の粘膜障害の原因になることが報告されている。本症例では癌性疼痛に対して麻薬およびNSAIDsを投与したところ、大腸潰瘍の穿孔を認め、緊急手術となった。癌患者の増加に伴い、癌性疼痛管理にNSAIDsを使用する機会も増えることが予想されるが、NSAIDsの使用にあたっては胃・十二指腸潰瘍などの上部消化管病変のみならず下部消化管病変、特に稀ではあるが大腸穿孔をきたす場合もあることに注意する必要がある。
- 著者(発表者)
- 豊島雄二郎ほか
- 所属施設名
- 国立病院機構北海道がんセンター消化器外科ほか
- 表題(演題)
- 肺癌再発に対する癌性疼痛管理中に発症したNSAIDs起因性大腸潰瘍穿孔の1例
- 雑誌名(学会名)
- 日本臨床外科学会雑誌 74(12) 3372-3376 (2013.12)
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