ペニシラミンによる劇症肝炎型Wilson病再発
2014年2月掲載
薬剤 | ペニシラミンアレルギー用薬その他の代謝性医薬品 |
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副作用 | 劇症肝炎型Wilson病再発 |
概要 | 35歳、男性。12歳時にKayser-Fleischer角膜輪、血中銅高値、血中セルロプラスミン高値、肝生検にてWilson病と診断され、D-ペニシラミンにて加療が開始された。34歳時に自己判断にて受診、内服を中止。1年後に全身倦怠感が出現するようになり、当科外来を受診した。肝障害を認め、Wilson病増悪と判断し、D-ペニシラミン内服を再開した。2週間後に羽ばたき振戦、意識障害、溶血性貧血、著明な肝予備能の低下を認め、既存のWilson病が長期のキレート剤中断にて溶血を伴う劇症肝炎型で再発症したと診断し、緊急入院となった。肝移植は家族の協力が得られないため、行わない方針となった。その後、血漿交換により溶血は改善し、血中銅も減少傾向にあったが、肝予備能の回復は認めず、肝不全により永眠した。 |
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Wilson病は先天性銅代謝異常により組織に銅が沈着することで肝障害、神経障害、眼症状といった様々な症状を呈する疾患である。治療には銅キレート剤であるD-ペニシラミンが投与される。本症例は12歳時よりWilson病と診断されD-ペニシラミンが投与されていたが、34歳時に約1年間投与を中断したところ、溶血を伴う劇症肝炎型で再発症した。長期のキレート剤の中断により臓器に銅の再沈着が生じ、再発症したと考えられる。溶血を伴う劇症肝炎型の Wilson病は稀であり、本症例のように予後も極めて不良である。また、薬剤投与が劇症肝炎型のWilson病の再増悪を起こした可能性も否定はできず、Wilson病に対する服薬指導の必要性が再認識された。
- 著者(発表者)
- 富永智ほか
- 所属施設名
- 大阪医科大学附属病院消化器内科
- 表題(演題)
- 銅キレート剤服薬中断後に溶血を伴う肝不全症状を呈したWilson病の1例
- 雑誌名(学会名)
- 肝臓 54(S-3) A873 (2013.11)
第40回 日本肝臓学会西部会 (2013.12.6-7)
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