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オラパリブによる血管炎

2022年4月掲載

薬剤 オラパリブ腫瘍用薬
副作用 血管炎
概要 80歳、女性。漿液性卵巣癌Stage IVB期の再発に対してPARP阻害薬のオラパリブ400mg/日を内服していた。内服開始から約1ヵ月後に左下腿の赤色丘疹が出現した。近医皮膚科を受診し、ステロイド外用を試みたが改善しなかった。内服開始から約1ヵ月半後に両下腿屈側の発赤、腫脹、硬結を認め、当科を紹介受診した。両下腿屈側に皮下硬結、圧痛を伴う紫斑を認めた。MPO-ANCA、PR3-ANCAはともに陰性、CRPは0.89と軽度上昇を認めた。発熱、腎機能低下などの全身症状、多臓器障害は認めなかった。皮膚生検で動静脈のフィブリノイド変性、赤血球の血管外漏出、核塵を認め、オラパリブによる血管炎と診断した。症状はオラパリブ中止後1週間で改善し、両下腿屈側の皮下硬結も消退した。

監修者コメント

オラパリブは、腫瘍細胞のDNA修復機構に着目し、損傷したDNAを修復するPARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)の働きを阻害することで、腫瘍細胞の増殖を抑制する薬剤である。BRCA遺伝子変異陽性の乳癌や卵巣癌などの治療に用いられている。本症例は、漿液性卵巣癌の再発に対してオラパリブの内服を開始したところ、薬剤性血管炎を発症した1例である。本薬剤による薬剤性血管炎の報告は過去に1例のみであり、他のPARP阻害薬における血管炎の報告はない。稀な副作用ではあるが、本薬剤の内服中に紫斑を生じた場合は、薬剤性血管炎の可能性を考慮し、薬剤の中止などを検討すべきである。

著者(発表者)
福井真衣子ほか
所属施設名
愛媛大学ほか
表題(演題)
オラパリブによって惹起された薬剤性血管炎の1例
雑誌名(学会名)
第51回 日本皮膚免疫アレルギー学会総会学術大会 プログラム・抄録集 198 (2021)
第51回 日本皮膚免疫アレルギー学会総会学術大会(2021.11.26-12.27)

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