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バリウムによる腹膜炎

2014年2月掲載

薬剤 バリウム診断用薬(体外診断用医薬品を除く)
副作用 バリウム腹膜炎
概要 65歳、女性。検診で上部消化管造影検査を受けた後排便なく、検査後4日目に腹痛が発現した。胸部および腹部単純X線像で遊離ガスと腸管外へのbariumの漏出が認められたため、当院へ紹介された。S状結腸憩室穿孔によるbarium腹膜炎および敗血症性ショックと診断し、発症から6時間後に緊急手術を施行した。腹腔内を生理食塩水で洗浄し、可能な限り付着したbariumの除去を行い、Hartmann手術を施行した。人工呼吸管理を行うとともに、昇圧薬、抗菌薬投与とエンドトキシン吸着療法(PMX-DHP)を施行し、ショック状態から回復した。対症療法により約4週間で軽快し、第45病日に退院した。初回手術から12ヵ月後に人工肛門閉鎖術を行った。

監修者コメント

大腸憩室症は、高齢者の増加や食事の欧米化に伴い本邦でも増加傾向にある。上部消化管造影検査後の大腸穿孔によるbarium腹膜炎は稀であるが、通常の穿孔性腹膜炎より重篤になりやすいため注意が必要である。検査後の早期の緩下薬投与によるbarium便の排泄が合併症回避に重要である。特に憩室穿孔は腸管内圧上昇で穿孔することが多いため、通常の処置で排泄がみられない場合は腸管内圧上昇をきたしうる強力な下剤投与や浣腸は控え、緩徐に排便を促すように注意すべきである。

著者(発表者)
古屋一茂ほか
所属施設名
山梨県立中央病院外科
表題(演題)
上部消化管造影検査後に発生したS状結腸憩室穿孔barium腹膜炎の1例
雑誌名(学会名)
外科 75(13) 1527-1530 (2013.12)

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